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Zeal of Ultralady 第十七話『俺と大怪獣』 Part9-1
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一斉砲撃を受けてよろめいたエルダイトが、攻撃者の九頭竜へ首を振り向けた時、相手はすでに二整射目の体勢に入っていた。
だが、九つの閃光が放たれる寸前、異形の巨大生物は上空から落ちかかってきた白銀の雷光によって弾き飛ばされる。
自分の倍はある巨体を弾き飛ばした銀と青の巨影は、降り注ぐ雨の中、均整の取れた身を湖の中に立ち上げた。
女性としての美しさの中にも、引き締まった強靱さを持つ巨大な麗姿。
鈍色の甲冑に映えるプラチナブロンド、真実を見通すかのような群青の目、胸には生命を育む海洋のごとき色の結晶体。
それは、有害巨大生物という災害から、身を挺して人々を守護する白銀の戦女神、ウルトラレディ・ジールの姿に他ならない。
麗しき白銀の戦女神は、背後の穏和な大怪獣が、全くと言っていいほど傷を負っていない事実を認めると、新たに現れた異形の竜へ素早く向き直る。
“洋美さん。いきなりで申し訳ないのですが、この地球において、あのような形状に類似した生物は他に存在している物なのでしょうか?”
珍しい事に、今回は相対する巨大生物についての質問をジールの方が洋美へ飛ばす。
“いえ、未確認情報でさえ存在してる形跡はなかったわ。……通常生物に指や触手が何本もあるのとは訳が違うもの”
“そうですか。では、可愛そうですが殲滅を目的として戦いましょう”
“わかった。……でも、あのエルダイト、動かないわね”
さりげなく言った洋美の一言には、多分に安堵の念が含まれていた。
先日の会議時に出た、エルダイトと新たな怪獣による戦女神挟撃の可能性は、ただの取り越し苦労に過ぎなかったとわかり、ジール自身も内心微笑する。
二人の安堵は、自らの負担が予想より小さかったためではない。
あの青玉の大怪獣と心を通わせる少年の想いを、無惨に砕かずに済んだがための物であった。
“さあ、行きますよ!”
普段通りの力強い構えを取っていたジールは、やにわに湖底を蹴って九頭竜へと突進する。
疾走する戦女神の巨体は、濡れた装甲外皮が普段とは別種の質感を湛えており、それが吹き付ける風雨によって霞がかる様は、まさに幻想的としか言いようのない美しさを誇っていた。
首の長さから予想できる九頭竜の攻撃可能な範囲。そこへ踏み入る瞬間、ジールは左腕を一閃させた。
迸るレーザーの光条は四筋。
それぞれが一つずつ敵の首を撃ち、小規模な爆発と衝撃波を誘発する。
その初撃に怯んだ九頭竜の左側面へ回るや、白銀の戦女神は渾身の力を込めたストレートを敵の脇腹に叩き込む。
だが、異形の竜もエルダイトに匹敵する巨体だけあり、僅かにぐらついただけでジールの攻撃に耐えきってしまう。
反撃の尾の一撃をバック転で交わした時、すぐ目前には襲い来る九つの首があった。
その全てをジールは躱し、弾き、受け流すことで無効化するが、さすがに反撃を返すまでには至らない。
間を取ろうと背後へ大きく飛ぶが、そこにも予想外の素早さで詰め寄ってくる漆黒の異形竜。
“クッ!”
やや上方から撃ち出される無数の咬撃を、ジールはあえて前方へ身を投げ出す事で回避する。
そのまま素早い前転をこなして身を立ち上げた時、すぐ目の前に九頭竜の横っ腹が位置していた。
瞬間的に右手の光線剣を発生させ、全身を使って斬撃を繰り出そうとした瞬間である。
横合いから幾つもの重い打撃を纏めて食らい、ジールは湖のまっただ中へ叩き込まれてしまう。
仰向けに水中へ倒れ込んだ戦女神が、その身を起こそうとした瞬間、真上から強靱な前足がのし掛かってくる。
“ぐうっ!”
強力な踏みつけを見舞われ、再度湖底に押し戻されたジールの中で、洋美は意外なほど機敏な敵の反応速度に驚愕していた。
“こいつ、似たような体格なのに、エルダイトよりずっと素早いなんて!”
その疑念には、自らを踏みつける敵の足を支えたジール本人が、苦しげに答えてくる。
“これは、私の予想ですが……相手の九頭竜は、多数の脳を持つ事によって、情報の分散処理を可能としているのでしょう。一つ一つの脳の容量は知的生物に劣っていても、外部情報の処理、自らの肉体への指令伝達といった面では、役割分担をする事で非常に高い効率的を出しています”
さすがに、重量が己の数倍はある巨大生物の圧力は凄まじい物があり、言い終えたジールは苦しげに呻き声を上げた。
そして、そのまま一切の動作を停止し、時間の経過を待つ。
時間にして約二分。
活動時間に制限のある執行官からすれば、極めて貴重な時を投資したジールだが、すぐにその恩恵を回収する機会は訪れた。
獲物の活動が沈黙した事を認めた九頭竜が、巨大な前足をどかし、様子を伺うように九つの首を水中のジールへと伸ばしてくる。
瞬間、百メートル近い巨大な水柱を立ち上らせながら、白銀の巨体が跳ね起きる。
秒間十数発の猛打を敵の首にたたき込みながら、弾けるように距離をとるジール。
無造作に背後の湖へ着地すると、自らの半身へ言葉をかける。
“思った通りです。この程度の詐術にかかるなど知的生物ではない証拠。……それをふまえて戦えば、負ける事はないでしょう”
再び構えを取り直したジール。
その目前で、九頭竜は再び全ての頭部を乱雑に展開させ、鰐のごとき口をかき開く。
青玉の大怪獣すら揺るがした大威力の砲撃の予兆に、ジールは回避行動に一度入ろうとして、すぐに何かを思い返したようにその場へ踏みとどまる。
間髪入れずに発射された、九頭竜のエネルギー放射。
すかさず空間歪曲の盾を構成し、それを上方へと散らす戦女神だったが、今度の九頭竜の砲撃は九連撃では収まらない物であった。
九つの首で、代わる代わるエネルギーの充填と射出を繰り返す事により、絶え間ない破壊光弾の連射をジールへと浴びせてくる。
しかし、そのあたりは白銀の戦女神にとっても予測済みであったらしい。
左手の盾を全面に押し出しつつ、右腕に光線剣を発生させ、さながら西洋の騎士のごとく猛然と異形の竜へと突進する。
そして、僅かに背後を顧みて、己が守ったエルダイトや、その周囲の人々の無事を確認すると、無言で武器を携えた右腕に力を込めた。
盾を消しつつ、襲い来る破壊光弾を残らず青き光線剣で叩き落とし、迅雷の早さで九頭竜の側面へと駆け抜ける。
すれ違いざまに浴びせた一閃が漆黒の鱗を切り裂き、通常の生物と変わらぬ赤き血を噴出させた。
『GOSYUAAAAA!!』
全ての首から苦痛の咆吼を迸らせる九頭竜。
しかし、その反撃は唐突で、戦女神の一番の弱点を突く物であった。
ジールが位置する右側の四つの首は、そのまま白銀の麗姿に向かって、残りの五つは己の正面で慌てたように身じろぎするばかりのエルダイトへ向け、それぞれ同時に口腔をかき開いたのである。
“いけないっ!!”
破壊の閃光が撃ち出されるより早く駆け出したジールは、まさに一瞬の差でエルダイトと九頭竜の合間に身を割り込ませた。
しかし、横っ飛びに投げ出した白銀の肢体は、強烈な閃光の直撃を受け、木っ端のように弾かれてダムの水面に叩きつけられる。
“ぐっ、ううっ……”
九頭竜の撃ち出したエネルギー流の威力は凄まじい物があり、さしものジールも全身から蒸気を立ち上らせつつ、しばしダムの浅瀬で仰臥したまま起き上がれずにいた。
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やられ役怪獣のDNA?(笑)