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Zeal of Ultralady 第十七話『俺と大怪獣』 Part7-2
「しかしなぁ、剛くん。地球の動物にだって、人を取って食う種類はいる。そして、そのどれもが人を遊び半分で殺す訳じゃない。あくまで純粋な本能に基づいて人間へ牙を剥くんだ。見た目で動物の内面を判断するのが危険だという事はわからんか?」
殊更人の悪い表情をしてる訳ではないのだが、湯島の鋭い顔立ちは時に必要以上に皮肉っぽく見えてしまう。
この時もまさにそうであった。
「わかんねえよ! うまく言えねえけど、俺は最後まであいつを信じるからなっ!!」
言うなり、待機所の天幕を飛び出してゆく少年。
すかさず父親の正と、若き女性生物学者が彼の後を追った。
剛の必死さに打たれていた面々も、やがて我に返って表情を元に戻してゆく。
「やれやれ。憎まれ役も楽ではありませんな、湯島さん」
苦笑しつつ言ったのは城島である。
「まあ、これで後は池上がうまくやってくれるでしょう」
そう言ってため息をつく中年超能力者の表情は、部下への信頼と、少年への申し訳なさが混ざった物となっていた。
そして、そこにまた新たな情報を携えた林田が入室して来る。
「隊長。何かあったんですか?」
「大した事じゃない。それより、報告があるんだろう?」
天幕の出入り口から、背後を振り向きつつ言う林田に、城島は情報の伝達を要求する。
「新たな怪獣の進路と推定潜伏地点が割り出されました。やはり、真名川ダムの上流部です」
その第一声に続いた林田の簡単な説明によれば、昨夜自衛隊の部隊を襲った新たな巨大生物の進路は、真名川ダムに至る真名峡に沿ってであり、渓谷の底の植物が軒並み下流域へ向かって押し倒されていたという。
情報を受け取った一同は、揃って渋い顔となる。
「今、あのダム湖には二体の巨大生物が同居している事になるのか」
「そうですね。しかし、ダム湖のエルダイト観測班からの報告では、ソナーに反応する水中の巨大生物はエルダイトのみ。それも普段と変わらない穏やかさだそうです」
「不可解だな。それでは、二体目のDTは一体どこへいったと言うんだ?」
謎かけを受けたような表情で考え込む湯島のセリフ。
しかし、この場の誰もが、今はそれに対する答えを持っていなかった。
多大な懸念を抱えつつも、翌日からは予定通り、エルダイトへの餌の供給が開始されていた。
やはり、推定体重12000トンの巨大怪獣だけあり、一日に必要な餌の量ともなると軽く百数十トンもの量に達する。
人が用意できる餌の種類は、非食用の工業用穀類や飼料に、目方を水増しするための牧草を混ぜた物である。
無論、ほとんど準備の時間が取れなかった治安当局に、これほどの量の物資をすぐに用立てる事などできるはずもない。
そこで、DEMIO調査課の報告を受けた御津崎グループが、急遽その物流ルートをフル稼働させ、国内外から必要最低限の物資をかき集める事態となっていた。
それにより、この大野市には、怪獣の食料を満載した無数のトレーラーが長蛇の列をなすという、一種異様な光景が四日にわたって続いている。
その間、調査課一班の面々は、巨大になりすぎた計画の配置から一歩外に身を置いて事態の観察に終始していた。
そして、拠点とした旅館において、連日組織内の連絡網とTV放送などを介し、事態の推移を見守りつつ有事に備えている。
『ここ福井県大野市で、現在五日目に入った怪獣保護の計画は、現在に至るまで全て順調な様子を見せています』
部屋に備え付けられているTVからの映像には、トレーラーの列めを背景に、若い女性キャスターが計画の概要を解説していた。
『なお、エルダイトと名付けられたその怪獣は、市街地に流れ込む真名川上流のダムに存在しているため、不測の事態に備え、計画の終了時まで大野市全域に避難命令が発令されております』
実際、事件の中枢にいる事の多い調査課一班の面々にとって、このような一般向けの報道を視聴する事は、客観性を保つためにも大きな意味を持つ。
「まあ、ここまでは順調だな」
座布団の上にあぐらをかいた工藤が、目前のテーブルから玉露を取り上げつつ言った。
「このまま何も起こらない、と考えるのは早急よね」
その隣に座る洋美は、半ば諦め、半ば苦笑といった表情で内心の感想を口にしていた。
これまでの経験上、仮にも相手が生物である場合、自分たちの思惑通りに事が進むケースが極めてまれであったための反応である。
「そういえば、池上さんはどうした? さっきから姿が見えないようだが」
洋美から対面に腰掛けた士堂が、室内に小柄な女性学者の姿をない事に疑問を呈した。
「彼女は今、剛君に付き添って、班長と一緒にエルダイトへの食料供給業務に就いてますよ」
そう答えた佐々木の返答に、一同が揃って納得した様子を見せた時である。
「わりぃ、チャンネル変えるぜ」
背後の布団の山に寄りかかった和人が、手にしたリモコンを操り、TVの画面を順繰りに選局してゆく。
ふと、その画面の選択が止まったのは、民放のニュース番組の画面であった。
今回の事件とはまるで無関係な、だが、決して軽視できない重大事件の場面が映し出されていた。
『本日未明、沖縄本島沖約50キロメートルの海上で発生した、巨大生物タンカー襲撃事件により、周辺海域には約5万バーレルに及ぶ原油が流出しております』
「なんだよ、こりゃあ……」
チャンネルを変えた当の和人が、思わずその場で立ち上がる。
彼だけではなく、室内の全員が凝然と送る視線の先。そのTV画面の中には、横っ腹に巨大な裂け目をつけられたタンカーから、おびただしい量の原油が流出し、晴れ渡った南海の海原を毒々しい色に染め上げている景色が展開されていた。
「ヴァルディーズやナホトカの二の舞かよ……」
苦々しげに工藤がそう言った時である。
「これも、巨大生物の仕業なのね」
ここ数日、いまいち精神的に浮かない調子の洋美が、どこか思い詰めた様子でそう漏らす。
「まいったな。こうもやっかい事が連続して起きるとは」
普段、大人らしい余裕に満ちた士堂でさえ、どこか憮然とした表情になっている。
そしてまた、工藤の手持ちの携帯電話が鳴り響き、一同へ一つの事件の渦中にいる事を認識させる。
「……はい。……了解しました。時間ですので、俺たちも全員でそちらへ向かいます」
連絡の相手は班長の湯島であろう。ごく短い応答のみで通話を済ませた工藤は、全員を振り返って言った。
「そろそろ予定していた時間だから、現地へ出てこいとのお達しだ」
「やっと、ジールの出番って訳か」
待ちくたびれたという風情の和人が、苦笑気味に洋美の横側に視線をやった。
「そうね、焦っても仕方ないわ。一つ一つ、できる事を片付けていきましょう」
TV画面の原油流出事故を眺めながら、洋美は自らに言い聞かせるように言い、力強く立ち上がったのであった。
殊更人の悪い表情をしてる訳ではないのだが、湯島の鋭い顔立ちは時に必要以上に皮肉っぽく見えてしまう。
この時もまさにそうであった。
「わかんねえよ! うまく言えねえけど、俺は最後まであいつを信じるからなっ!!」
言うなり、待機所の天幕を飛び出してゆく少年。
すかさず父親の正と、若き女性生物学者が彼の後を追った。
剛の必死さに打たれていた面々も、やがて我に返って表情を元に戻してゆく。
「やれやれ。憎まれ役も楽ではありませんな、湯島さん」
苦笑しつつ言ったのは城島である。
「まあ、これで後は池上がうまくやってくれるでしょう」
そう言ってため息をつく中年超能力者の表情は、部下への信頼と、少年への申し訳なさが混ざった物となっていた。
そして、そこにまた新たな情報を携えた林田が入室して来る。
「隊長。何かあったんですか?」
「大した事じゃない。それより、報告があるんだろう?」
天幕の出入り口から、背後を振り向きつつ言う林田に、城島は情報の伝達を要求する。
「新たな怪獣の進路と推定潜伏地点が割り出されました。やはり、真名川ダムの上流部です」
その第一声に続いた林田の簡単な説明によれば、昨夜自衛隊の部隊を襲った新たな巨大生物の進路は、真名川ダムに至る真名峡に沿ってであり、渓谷の底の植物が軒並み下流域へ向かって押し倒されていたという。
情報を受け取った一同は、揃って渋い顔となる。
「今、あのダム湖には二体の巨大生物が同居している事になるのか」
「そうですね。しかし、ダム湖のエルダイト観測班からの報告では、ソナーに反応する水中の巨大生物はエルダイトのみ。それも普段と変わらない穏やかさだそうです」
「不可解だな。それでは、二体目のDTは一体どこへいったと言うんだ?」
謎かけを受けたような表情で考え込む湯島のセリフ。
しかし、この場の誰もが、今はそれに対する答えを持っていなかった。
多大な懸念を抱えつつも、翌日からは予定通り、エルダイトへの餌の供給が開始されていた。
やはり、推定体重12000トンの巨大怪獣だけあり、一日に必要な餌の量ともなると軽く百数十トンもの量に達する。
人が用意できる餌の種類は、非食用の工業用穀類や飼料に、目方を水増しするための牧草を混ぜた物である。
無論、ほとんど準備の時間が取れなかった治安当局に、これほどの量の物資をすぐに用立てる事などできるはずもない。
そこで、DEMIO調査課の報告を受けた御津崎グループが、急遽その物流ルートをフル稼働させ、国内外から必要最低限の物資をかき集める事態となっていた。
それにより、この大野市には、怪獣の食料を満載した無数のトレーラーが長蛇の列をなすという、一種異様な光景が四日にわたって続いている。
その間、調査課一班の面々は、巨大になりすぎた計画の配置から一歩外に身を置いて事態の観察に終始していた。
そして、拠点とした旅館において、連日組織内の連絡網とTV放送などを介し、事態の推移を見守りつつ有事に備えている。
『ここ福井県大野市で、現在五日目に入った怪獣保護の計画は、現在に至るまで全て順調な様子を見せています』
部屋に備え付けられているTVからの映像には、トレーラーの列めを背景に、若い女性キャスターが計画の概要を解説していた。
『なお、エルダイトと名付けられたその怪獣は、市街地に流れ込む真名川上流のダムに存在しているため、不測の事態に備え、計画の終了時まで大野市全域に避難命令が発令されております』
実際、事件の中枢にいる事の多い調査課一班の面々にとって、このような一般向けの報道を視聴する事は、客観性を保つためにも大きな意味を持つ。
「まあ、ここまでは順調だな」
座布団の上にあぐらをかいた工藤が、目前のテーブルから玉露を取り上げつつ言った。
「このまま何も起こらない、と考えるのは早急よね」
その隣に座る洋美は、半ば諦め、半ば苦笑といった表情で内心の感想を口にしていた。
これまでの経験上、仮にも相手が生物である場合、自分たちの思惑通りに事が進むケースが極めてまれであったための反応である。
「そういえば、池上さんはどうした? さっきから姿が見えないようだが」
洋美から対面に腰掛けた士堂が、室内に小柄な女性学者の姿をない事に疑問を呈した。
「彼女は今、剛君に付き添って、班長と一緒にエルダイトへの食料供給業務に就いてますよ」
そう答えた佐々木の返答に、一同が揃って納得した様子を見せた時である。
「わりぃ、チャンネル変えるぜ」
背後の布団の山に寄りかかった和人が、手にしたリモコンを操り、TVの画面を順繰りに選局してゆく。
ふと、その画面の選択が止まったのは、民放のニュース番組の画面であった。
今回の事件とはまるで無関係な、だが、決して軽視できない重大事件の場面が映し出されていた。
『本日未明、沖縄本島沖約50キロメートルの海上で発生した、巨大生物タンカー襲撃事件により、周辺海域には約5万バーレルに及ぶ原油が流出しております』
「なんだよ、こりゃあ……」
チャンネルを変えた当の和人が、思わずその場で立ち上がる。
彼だけではなく、室内の全員が凝然と送る視線の先。そのTV画面の中には、横っ腹に巨大な裂け目をつけられたタンカーから、おびただしい量の原油が流出し、晴れ渡った南海の海原を毒々しい色に染め上げている景色が展開されていた。
「ヴァルディーズやナホトカの二の舞かよ……」
苦々しげに工藤がそう言った時である。
「これも、巨大生物の仕業なのね」
ここ数日、いまいち精神的に浮かない調子の洋美が、どこか思い詰めた様子でそう漏らす。
「まいったな。こうもやっかい事が連続して起きるとは」
普段、大人らしい余裕に満ちた士堂でさえ、どこか憮然とした表情になっている。
そしてまた、工藤の手持ちの携帯電話が鳴り響き、一同へ一つの事件の渦中にいる事を認識させる。
「……はい。……了解しました。時間ですので、俺たちも全員でそちらへ向かいます」
連絡の相手は班長の湯島であろう。ごく短い応答のみで通話を済ませた工藤は、全員を振り返って言った。
「そろそろ予定していた時間だから、現地へ出てこいとのお達しだ」
「やっと、ジールの出番って訳か」
待ちくたびれたという風情の和人が、苦笑気味に洋美の横側に視線をやった。
「そうね、焦っても仕方ないわ。一つ一つ、できる事を片付けていきましょう」
TV画面の原油流出事故を眺めながら、洋美は自らに言い聞かせるように言い、力強く立ち上がったのであった。
コメント
No title
よいお年を
いかにもわくわくするような展開を期待させる締めくくりですね。お疲れ様でした。
どうぞよいお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。
どうぞよいお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。
┴┬|ω'*)゚.:。+゚
今年は、色々お世話になり且つ!
楽しませていただきました♪(o〃>ω<)oミ(o〃_ _)oペコリ
来年もよろしくお願いします♪ペコリ(o_ _)o))
楽しませていただきました♪(o〃>ω<)oミ(o〃_ _)oペコリ
来年もよろしくお願いします♪ペコリ(o_ _)o))
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お世話になった皆様、拙作をご覧頂いた皆様。
今年一年、どうもありがとうございました。
また、来年もよろしくお願い致します。