ちょっとした難題
こんばんは、管理人です。
前回はちょっと失敗しました。
というのも、そもそも私はフィギュアのモデリングを短期間で終わらせられる腕はない訳です。
そこで、フィギュアがある程度形になるまで更新しない。と言ってしまうと、かなりの期間更新できなくなってしまう訳です。(アホですねw)
なので、今回ちょっとした問題が発生したついでに、あまり進んでいませんが進捗を掲載してみます。
正面図
方から上の首を作成しました。
背面図
前回は作っていなかった背面も、前面と同じ範囲まで制作。
今回はこれだけです。なんか、あまり進んでいませんね。
というのも、今回発生した問題の対処法を考え込んでいるうちに、時間だけが経ってしまった訳です。
うーん、さすがにモデリングは奥が深いです。だからこそ面白いんですが。
で、肝心の問題ですが、以下のような物です。(3Dモデリングに興味のない人にとっては、見てもほとんど意味のない記事である事を予めお断りしておきますw)
六角でモデリング中のヒッポリトの顔。
矢印の部分を見て下さい。
モデルの形状を決める線、つまりフレームが青くなっている部分があると思います。
それは、六角大王の『鋭角線にする』という処理を施した部分です。
この処理を施すと、ポリゴンの面同士にキッチリと角度がつき、形状がハッキリとわかるようになります。
フレーム非表示バージョン。
同じ部分です。
矢印の部分などが、カッチリと立体的になっているかと思います。
ですが、問題はここからです。
私は、3Dの形状を六角大王というモデリングソフトで制作し、同じモデリングソフトのメタセコイアを経て、3DCGソフトのPoserに取り込みます。
そして、取り込んだ先のPoserで関節や表面の質感などを設定し、3Dの人形として作成しています。
なので、Poserに取り込んだ段階でフィギュアの形が完全になっていないとダメな訳です。
で、作りかけのヒッポリト星人を試しにPoserに読み込んでみたところ……
矢印の所を見てみて下さい。
六角大王で鋭角にした部分が、軒並みノッペリしております。
なんか、溶け出したチョコ人形みたいで、このまま3Dフィギュアにするにはかなり無理がありますねw
現状ではちょっと理由が分かりません。
六角大王よりも、もう一つのモデリングソフトであるメタセコイアの方が、Poserとの相性が良いので、こういった処理はそっちでやる方がいいのでしょうが、どうやったら良いのか分かりません。(色々ググってみても、労力がかからずに済む方法はみつかりませんでした……orz)
自分でも当然努力しますが、もし解決法を教えてもいいよ、って方がいらっしゃいましたら感謝致します。
なんだか他力本願で情けない記事となってしまいましたが、今日はこの辺で。
では、また次回の更新でお会いしましょう~。
前回はちょっと失敗しました。
というのも、そもそも私はフィギュアのモデリングを短期間で終わらせられる腕はない訳です。
そこで、フィギュアがある程度形になるまで更新しない。と言ってしまうと、かなりの期間更新できなくなってしまう訳です。(アホですねw)
なので、今回ちょっとした問題が発生したついでに、あまり進んでいませんが進捗を掲載してみます。
正面図
方から上の首を作成しました。
背面図
前回は作っていなかった背面も、前面と同じ範囲まで制作。
今回はこれだけです。なんか、あまり進んでいませんね。
というのも、今回発生した問題の対処法を考え込んでいるうちに、時間だけが経ってしまった訳です。
うーん、さすがにモデリングは奥が深いです。だからこそ面白いんですが。
で、肝心の問題ですが、以下のような物です。(3Dモデリングに興味のない人にとっては、見てもほとんど意味のない記事である事を予めお断りしておきますw)
六角でモデリング中のヒッポリトの顔。
矢印の部分を見て下さい。
モデルの形状を決める線、つまりフレームが青くなっている部分があると思います。
それは、六角大王の『鋭角線にする』という処理を施した部分です。
この処理を施すと、ポリゴンの面同士にキッチリと角度がつき、形状がハッキリとわかるようになります。
フレーム非表示バージョン。
同じ部分です。
矢印の部分などが、カッチリと立体的になっているかと思います。
ですが、問題はここからです。
私は、3Dの形状を六角大王というモデリングソフトで制作し、同じモデリングソフトのメタセコイアを経て、3DCGソフトのPoserに取り込みます。
そして、取り込んだ先のPoserで関節や表面の質感などを設定し、3Dの人形として作成しています。
なので、Poserに取り込んだ段階でフィギュアの形が完全になっていないとダメな訳です。
で、作りかけのヒッポリト星人を試しにPoserに読み込んでみたところ……
矢印の所を見てみて下さい。
六角大王で鋭角にした部分が、軒並みノッペリしております。
なんか、溶け出したチョコ人形みたいで、このまま3Dフィギュアにするにはかなり無理がありますねw
現状ではちょっと理由が分かりません。
六角大王よりも、もう一つのモデリングソフトであるメタセコイアの方が、Poserとの相性が良いので、こういった処理はそっちでやる方がいいのでしょうが、どうやったら良いのか分かりません。(色々ググってみても、労力がかからずに済む方法はみつかりませんでした……orz)
自分でも当然努力しますが、もし解決法を教えてもいいよ、って方がいらっしゃいましたら感謝致します。
なんだか他力本願で情けない記事となってしまいましたが、今日はこの辺で。
では、また次回の更新でお会いしましょう~。
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3Dヒッポリト星人1
こんばんは、管理人です。
前々から作る作ると言っておいて、延ばし延ばしにしていたヒッポリト星人に手をつけ始めました。
モデリング自体はちょっと前から始めていたのですが、ようやく少しは見られる段階になったという事で、進捗の記録と雰囲気を見て貰うために公開してみます。
しっかしまー、見れば見るほど珍妙なデザインですね。この星人w
エースに出ていた旧タイプではなく、2008年の映画に出てきた新タイプを作っているのですが、色々と装飾が多くてこれはこれで大変です。
今現在、頭部の前面だけ作ったのですが、ようやくこのフィギュアの特徴が見えてきた感じですね。
では、以下二枚だけ画像を。
正面図
2008年の映画に出てきた、正式名称スーパーヒッポリト星人のタイプです。
確かに悪役らしくなった顔なんですが、いくら何でも「スーパー」はないだろう、とw
側面図
まだ後頭部は作ってませんが、突起物だけは一応背後まで制作。
今回は、バードンやゼロットスと違って、手元に完全な立体のモデルがあるので、とても作業がしやすいです。
2Dだけでは分からない細部が、文字通り手に取るように分かる訳ですし。
ま、モチベーションが高い理由として、早い所このモデルを完成させて、憧れのヒーローやヒロインをカッチカチやで! ってのもありますが。(笑)
今後の予定としましては、一応こいつも全身を完成させてから、ギゼンダと纏めてUV設定学習の素材にしてみようかと。
言ってみれば、兄弟モデルって事ですね。なんだかお互い嫌がりそうですが。
次回はもーちょい見られるくらい進めてから掲載します。
ではでは。
前々から作る作ると言っておいて、延ばし延ばしにしていたヒッポリト星人に手をつけ始めました。
モデリング自体はちょっと前から始めていたのですが、ようやく少しは見られる段階になったという事で、進捗の記録と雰囲気を見て貰うために公開してみます。
しっかしまー、見れば見るほど珍妙なデザインですね。この星人w
エースに出ていた旧タイプではなく、2008年の映画に出てきた新タイプを作っているのですが、色々と装飾が多くてこれはこれで大変です。
今現在、頭部の前面だけ作ったのですが、ようやくこのフィギュアの特徴が見えてきた感じですね。
では、以下二枚だけ画像を。
正面図
2008年の映画に出てきた、正式名称スーパーヒッポリト星人のタイプです。
確かに悪役らしくなった顔なんですが、いくら何でも「スーパー」はないだろう、とw
側面図
まだ後頭部は作ってませんが、突起物だけは一応背後まで制作。
今回は、バードンやゼロットスと違って、手元に完全な立体のモデルがあるので、とても作業がしやすいです。
2Dだけでは分からない細部が、文字通り手に取るように分かる訳ですし。
ま、モチベーションが高い理由として、早い所このモデルを完成させて、憧れのヒーローやヒロインをカッチカチやで! ってのもありますが。(笑)
今後の予定としましては、一応こいつも全身を完成させてから、ギゼンダと纏めてUV設定学習の素材にしてみようかと。
言ってみれば、兄弟モデルって事ですね。なんだかお互い嫌がりそうですが。
次回はもーちょい見られるくらい進めてから掲載します。
ではでは。
3Dギゼンダ7
ども、管理人です。
どうにかギゼンダのガワが完成したので、更新してみます。
今回は本体と組み合わせて、大体の形状を表示です。
正面
頭部のボリュームが相当大きくなってます。
斜め前
実は、耳の前にも房を出そうかと思ったのですが、それをやるとまるでカブキのようなってしまったのでボツにしました。(笑)
斜め後
背後から見ると結構スカスカです。
背面
毛先側から見ると、まるで頭皮がむき出しのように見えますが、ちゃんと頭髪のベースになっており、この部分にも髪のテクスチャーを適用する予定です。
これで大体の全体像というか、シルエットは完成ですね。
あとは、口内を作ってから、本体と髪にそれぞれUV設定を施してテクスチャーの制作。さらにその次にフィギュア化し、仕上げに表情のモーフを作成してゆく。といった形でしょうか。
何だかんだで、ここまでやってようやく六割って所ですかね。
これは、もしかしたら裏で進めてるヒッポリトの方が早く仕上がるかもしれません。(笑)
そんな感じで今回は経過報告のみです。
では、また次回~。
どうにかギゼンダのガワが完成したので、更新してみます。
今回は本体と組み合わせて、大体の形状を表示です。
正面
頭部のボリュームが相当大きくなってます。
斜め前
実は、耳の前にも房を出そうかと思ったのですが、それをやるとまるでカブキのようなってしまったのでボツにしました。(笑)
斜め後
背後から見ると結構スカスカです。
背面
毛先側から見ると、まるで頭皮がむき出しのように見えますが、ちゃんと頭髪のベースになっており、この部分にも髪のテクスチャーを適用する予定です。
これで大体の全体像というか、シルエットは完成ですね。
あとは、口内を作ってから、本体と髪にそれぞれUV設定を施してテクスチャーの制作。さらにその次にフィギュア化し、仕上げに表情のモーフを作成してゆく。といった形でしょうか。
何だかんだで、ここまでやってようやく六割って所ですかね。
これは、もしかしたら裏で進めてるヒッポリトの方が早く仕上がるかもしれません。(笑)
そんな感じで今回は経過報告のみです。
では、また次回~。
3Dギゼンダ6
こんばんは、管理人です。
再開した3Dフィギュア制作の内、今回からは頭髪の部分に入っていきます。
このギゼンダ、ザンバラな上にかなりの長髪なんで、初めて頭髪を制作する者にとっては少々難敵かも。
ただ、これまでPoserを弄ってきた結果、一応頭髪のモデルを作ってゆくイメージは最初からできていました。
なので、以下にそれを公開。
側面
こんな感じで、頭部に被せる表皮の上に、髪の毛の房を加えていきます。
斜め
まだ作り始めたばかりなんで、モヒカンっぽいですね。
真ん中だけに房を配置していた時は、本当ただのトサカでした(笑)
アップ
頭に被せる表皮の部分は、本体の頭部をコピーしてサイズアップしたもの。
完成しても、角の穴などがあるので、他のフィギュアには使えないでしょう。
そして、そこに配置した房は、一見棒状に見えますが、実は全部曲げた板状の物。
そこにUV設定を施し、テクスチャで髪の毛を表現しようという試みな訳です。
UV設定、苦手なんですが、そろそろ克服しておかないとなーと思い、今回チャレンジしてみる事に。
参考例1
これは無料配布されていた頭髪モデル。
このまま見ると普通に頭髪ですが、
参考例2
3Dモデルだけの表示にすると、これくらいシンプルな構造。
テクスチャによる表現って、本当奥が深いですね。
今手を付けているギゼンダは、本当ツンツンヘアーなんで房の数がやたらと多く、完成まではまだ暫く時間がかかりそうです。
つか、UVの設定、本当どうしよう?
メタセコイアでできるらしいんですが、他の機能と違ってどうにも使い方が分からないんですよね。
何か、いい解説サイトとかないもんでしょうか。(笑)
それでは、また次回の更新でお会いしましょう~。
再開した3Dフィギュア制作の内、今回からは頭髪の部分に入っていきます。
このギゼンダ、ザンバラな上にかなりの長髪なんで、初めて頭髪を制作する者にとっては少々難敵かも。
ただ、これまでPoserを弄ってきた結果、一応頭髪のモデルを作ってゆくイメージは最初からできていました。
なので、以下にそれを公開。
側面
こんな感じで、頭部に被せる表皮の上に、髪の毛の房を加えていきます。
斜め
まだ作り始めたばかりなんで、モヒカンっぽいですね。
真ん中だけに房を配置していた時は、本当ただのトサカでした(笑)
アップ
頭に被せる表皮の部分は、本体の頭部をコピーしてサイズアップしたもの。
完成しても、角の穴などがあるので、他のフィギュアには使えないでしょう。
そして、そこに配置した房は、一見棒状に見えますが、実は全部曲げた板状の物。
そこにUV設定を施し、テクスチャで髪の毛を表現しようという試みな訳です。
UV設定、苦手なんですが、そろそろ克服しておかないとなーと思い、今回チャレンジしてみる事に。
参考例1
これは無料配布されていた頭髪モデル。
このまま見ると普通に頭髪ですが、
参考例2
3Dモデルだけの表示にすると、これくらいシンプルな構造。
テクスチャによる表現って、本当奥が深いですね。
今手を付けているギゼンダは、本当ツンツンヘアーなんで房の数がやたらと多く、完成まではまだ暫く時間がかかりそうです。
つか、UVの設定、本当どうしよう?
メタセコイアでできるらしいんですが、他の機能と違ってどうにも使い方が分からないんですよね。
何か、いい解説サイトとかないもんでしょうか。(笑)
それでは、また次回の更新でお会いしましょう~。
十九話あとがきと二十話予告、及び雑感
こんばんは、管理人です。
どうにか、過去最長のエピソードを完結する事ができました。
思えば、三ヶ月以上もかかってしまったんですね。
これもひとえに最近めっきり忙しくなった仕事のためですね。
なんというか、時間よりも体力的にキツイ状態だったので、書くときは本当気合い入れて書かないと、筆が一向に進みませんでした。
で、本題のあとがきと言うか、反省点のような物をつらつらと。
まず、今回のお話を書いて得た教訓が、地球の文明とは全く別の異星を舞台としたSF物やスペオペは、本当に入念な準備と準備期間をおいてからでないと書くのは難しい。という事でしたね。
今回、溜まりに溜まった裏設定をベースに、一つのストーリーとして起こしてみたのですが、やはり宇宙戦闘やSF的な舞台設定を詰め切れず、明確な反省点となってしまいました。
正直な所、真面目に地球外文明を舞台として小説を書くならば、こういった一つのエピソードではなく、もっと大きく紙面を確保してやりたいですね。
ただ、その分ストーリーは、思い切り趣味に走らせてもらいました。
元々ヒューマンストーリーが好きで、こういった特撮と組み合わせたような物語を書いているのですが、今回は主役のスーパーヒロインの家族関係を掘り下げて行く事に集中しました。
二部に入って以来、主人公のジールが怪獣を倒すシーンが少なくなっていますが、今回に至っては変身した姿すら出ないという始末です(笑)
もっとも、その分シャディスが彼女の父親である事を前面に押し出しましたが、如何だったでしょうか?
作中でメルネデやジールを次々と娘として扱っていくあたり、なんだか白○げっぽくなってしまった気もしますが、私はああいう情に厚い関係が大好きなので、自然と似てしまったという事にしておきます。(笑)
なお、今回の一つのエピソードが完結しましたので、また例によってHPの方を更新致しました。
今回は、小説本編に加え、レディエーヌの設定画を合わせて公開しています。
興味のある方は、一度ご覧になって頂けたらと思います。
では、今回は雑感の前に、次回二十話の予告を先にしておきます。
とある平穏な一日。本部棟に詰めていた湯島の下へ、突如来客として現れた一人の少女。
その人物こそが、調査課一班をかつてない珍事件に巻き込む発端であった。
一班の知識も、対策室の権限も通用せず、果てはジールでさえやる気を無くすという前代未聞の難局に、班長・湯島の頭脳が冴え渡る!?
次回、Zeal of Ultralady 第二十話『その御名、讃うべき哉』にご期待ください。
十九話が少々シリアスでしたので、次回はライト&ポップな感じでやっていく予定です。
恐らく、従来のウルトラシリーズでは、ありそうでなかった展開に出来るんじゃないかと思います。
で、ここからは雑感です。
まず一発目。
禁煙は続いています。でも、そのせいで体重が急速に上昇中! ピンチですっ!! 以上!!
次、二発目。
二十話執筆を開始する前に、中断していた3Dフィギュアなどを形にしたいと思います。
そのため、また小説は少し遅れるかも知れませんが、ウルトラヒーロー系CGの分野を盛り上げる力になりたいと思っているので、どうぞ大目に見て頂けたらと思います。(世間的には文章より画像の方が人気が高いので、むしろCGの方が喜ばれるんでしょうけどねw)
三発目。
二発目とかぶるのですが、3Dフィギュア関係の話題です。
今現在、ギゼンダの他にヒッポリト星人も手を付けています。
で、申し訳無いのですが、ギゼンダのフィギュアは内輪のみで回す形の予定でいます。
ただ、版権物のヒッポリトは広く使って貰った方が良いと思うんですが、どのような公開方法が良いのかイマイチ把握できずにいます。
その方法について、来訪された方のご意見とかを伺いたいと思います。何か良い案があれば、お教え頂けたらと思います。
さて、書きたい内容は出尽くしたので、今回はここらへんで失礼致します。
次回の更新でお会いしましょう。ではでは。
どうにか、過去最長のエピソードを完結する事ができました。
思えば、三ヶ月以上もかかってしまったんですね。
これもひとえに最近めっきり忙しくなった仕事のためですね。
なんというか、時間よりも体力的にキツイ状態だったので、書くときは本当気合い入れて書かないと、筆が一向に進みませんでした。
で、本題のあとがきと言うか、反省点のような物をつらつらと。
まず、今回のお話を書いて得た教訓が、地球の文明とは全く別の異星を舞台としたSF物やスペオペは、本当に入念な準備と準備期間をおいてからでないと書くのは難しい。という事でしたね。
今回、溜まりに溜まった裏設定をベースに、一つのストーリーとして起こしてみたのですが、やはり宇宙戦闘やSF的な舞台設定を詰め切れず、明確な反省点となってしまいました。
正直な所、真面目に地球外文明を舞台として小説を書くならば、こういった一つのエピソードではなく、もっと大きく紙面を確保してやりたいですね。
ただ、その分ストーリーは、思い切り趣味に走らせてもらいました。
元々ヒューマンストーリーが好きで、こういった特撮と組み合わせたような物語を書いているのですが、今回は主役のスーパーヒロインの家族関係を掘り下げて行く事に集中しました。
二部に入って以来、主人公のジールが怪獣を倒すシーンが少なくなっていますが、今回に至っては変身した姿すら出ないという始末です(笑)
もっとも、その分シャディスが彼女の父親である事を前面に押し出しましたが、如何だったでしょうか?
作中でメルネデやジールを次々と娘として扱っていくあたり、なんだか白○げっぽくなってしまった気もしますが、私はああいう情に厚い関係が大好きなので、自然と似てしまったという事にしておきます。(笑)
なお、今回の一つのエピソードが完結しましたので、また例によってHPの方を更新致しました。
今回は、小説本編に加え、レディエーヌの設定画を合わせて公開しています。
興味のある方は、一度ご覧になって頂けたらと思います。
では、今回は雑感の前に、次回二十話の予告を先にしておきます。
とある平穏な一日。本部棟に詰めていた湯島の下へ、突如来客として現れた一人の少女。
その人物こそが、調査課一班をかつてない珍事件に巻き込む発端であった。
一班の知識も、対策室の権限も通用せず、果てはジールでさえやる気を無くすという前代未聞の難局に、班長・湯島の頭脳が冴え渡る!?
次回、Zeal of Ultralady 第二十話『その御名、讃うべき哉』にご期待ください。
十九話が少々シリアスでしたので、次回はライト&ポップな感じでやっていく予定です。
恐らく、従来のウルトラシリーズでは、ありそうでなかった展開に出来るんじゃないかと思います。
で、ここからは雑感です。
まず一発目。
禁煙は続いています。でも、そのせいで体重が急速に上昇中! ピンチですっ!! 以上!!
次、二発目。
二十話執筆を開始する前に、中断していた3Dフィギュアなどを形にしたいと思います。
そのため、また小説は少し遅れるかも知れませんが、ウルトラヒーロー系CGの分野を盛り上げる力になりたいと思っているので、どうぞ大目に見て頂けたらと思います。(世間的には文章より画像の方が人気が高いので、むしろCGの方が喜ばれるんでしょうけどねw)
三発目。
二発目とかぶるのですが、3Dフィギュア関係の話題です。
今現在、ギゼンダの他にヒッポリト星人も手を付けています。
で、申し訳無いのですが、ギゼンダのフィギュアは内輪のみで回す形の予定でいます。
ただ、版権物のヒッポリトは広く使って貰った方が良いと思うんですが、どのような公開方法が良いのかイマイチ把握できずにいます。
その方法について、来訪された方のご意見とかを伺いたいと思います。何か良い案があれば、お教え頂けたらと思います。
さて、書きたい内容は出尽くしたので、今回はここらへんで失礼致します。
次回の更新でお会いしましょう。ではでは。
Zeal of Ultralady 第十九話『戦神からの贈り物』 Part13-2
暫しの沈黙の後、城島が立ち上がり、部屋の雨戸を開けて日の光を取り込んだ。
その間、洋美はとうに空になっていたジョッキへ、隣室の冷蔵庫から持ってきたアイスコーヒーを注ぎ直していた。
そのまま、感慨深そうな顔で黙ってコーヒーを口にする二人の同化者。
意外な沈黙に、痺れを切らしたのはシャディスの方であった。
“なあ、惑星ジールの人間でも滅多に見られない記録映像なんだぞ。何か感想とかはないのか?”
「ああ、素晴らしい物を見せて貰った。ありがとう」
紛れもない充実感を感じている城島の声。
“内容自体に言う事はないのか?”
「あるにはあるが、映画のように簡単に語れる物でもないだろう。実際に戦火の時代を生き、大事な人を失った者の心情を慮ればなおさらだ」
デリカシーに溢れすぎた城島の調子に、どこか拍子抜け調子のしたシャディス。
見かねた洋美が笑顔で発言した。
「だったら、私から質問。今見てきた人たちのその後について、差し支えのない範囲で聞かせて貰えたら嬉しいわ」
“お、良い質問だぜ、ヒロミ。で、まず誰の事を聞きたい?”
「そうね。まずはジールの兄弟のメルネデさん」
“良い所を付くな。今現在、あいつは新しい上等執行官候補生の教育で、母星とは別の宙域に赴任中だ。俺らより全然楽な任務なんで、かなりのびのびとやってるらしいぜ”
ほほー、と同化者二人が感嘆の意を示す。
「だったら、メルネデさんと同化していたレーゼさんは?」
“レーゼさんは、あの映像の後も模範的な軍務官として忠実に任務をこなし、定年による退任時には一等宙将にまで昇進しました。地球時間換算にして九十六歳で老衰を迎えましたが、沢山のお子さんに恵まれ幸せな一生だったと言います”
今度は、ジールがレーゼのその後を、大ざっぱに解説する。
「あと、主役以外で印象深いって言うと……ネルザスの五柱将軍とかは?」
“あいつらは、その後も何度となくやり合ったさ。結局生きていたベルシェンクの野郎は、捕虜交換でネルザスに返さなきゃならなかったしな”
“しかし、最後の会戦の後、我々はネルザスの支配者階級のゼイルマーとバルゲイツを倒し、エリンザロス・ベルシェンク・ガリエネーダ・ザリエンテスを捕虜として、母星の地下に眠らせたまま捕虜としています”
「ほう。ネルザス側も、意外と生き残っている物なんだな」
その辺りの事情は、地球の軍事情勢と共通点を見いだせるらしく、城島が意表をつかれたように感心していた。
「まぁな。ただ、その後こっちもフェルドーンとルデリアンが戦傷で引退、メナは艦隊戦で宇宙に散った。……つくづく、戦争なんてこの世から無くなっちまえと思うぜ」
吐き捨てるように言ったシャディスの言葉は、この場の四人全員に共通している思いであった。
若干沈みかけた雰囲気の中、今度は城島が口を開く。
「お前さんの好敵手、宇宙海賊ディークロイストはどうなった? お前の手で逮捕できたのか?」
“ま、まだだよ。奴は今も義賊気取りで、法の網の目を潜り抜けて私服を肥やすバカどもなんかを狙って、この銀河中飛び回ってるよ”
「なるほどな」
そこで一端言葉を切った城島は、思い当たる最後の一人の名を口にする。
「で、先ほどの物語の主役とも言えるレディエーヌなんだが……」
過去の惑星ジールの危機を救った、麗しき剣の戦乙女。その彼女におきた悲劇を思い返し、城島の言葉の語尾は若干ながら曇っていた。
その問いに答えたのは、意外にも同じ同化者の洋美であった。
「私、レディエーヌのその後の事、知ってるわ。城島さん」
「志賀さんが?」
素直に驚く城島に対し、洋美はどことなく得意げな、それでいて優しさを含んだ笑顔を浮かべていた。
「彼女なら、今もこの地球で結構充実した時間を過ごしていると思うな。……ねっ、そうでしょ? ジール」
瞬き二回分ほどの時間を置いて、城島も洋美の言わんとしている事に気がついた。
「……なるほど、そういう事か」
対するジールは、やや答えづらそうに口を開いた。
“……いつから、気づいていたのですか? 洋美さん”
「レディエーヌの姿を最初に見た時、直感的にね。その後、言葉を聞いたり、行動を見たりしている内に確信に変わっていったわ。最後の方になると、もうレディエーヌの事はあなたとしてしか見られなかった」
二人の絆の深さから言えば、洋美がレディエーヌを現在のジールと同一人物と気づいても、特に不思議な事ではない。
それでも、ジールは嬉しそうであった。
“確かにあの時の私は、レディエーヌ・バーディスラウドという名を持った、一人のメナ人の軍務官でした。……それにしても、その眼力はさすがと言うべきですね。洋美さん”
「ふふっ、もう一人の自分の事を気づけないようじゃ、同化者やってる資格はないわよ」
諧謔味を帯びた物言いに、四人がそれぞれ微笑を漏らして場が和む。
そんな中、再びジールが言葉を綴った。
“あの戦いから暫くしてのち、私は自分のような思いをする者を少しでも減らしたいという思いと、ネルザスに対する復讐心とで、執行官となる事を希望しました”
己の過去を語るジールだが、その調子は意外なほど淡々としている。
“ま、今の映像を見て分かる通り、ジールは強制進化の適用以前から、何事につけ天才と呼ぶに相応しい娘だった。……上等執行官になるのにそう時間はかからなかったよ”
「それは俺も思った。本当の文武両道という奴だったな」
シャディスに城島が追従すると、ジールは照れたような雰囲気を見せる。
そこに洋美が追撃の言葉を放つ。
「同感。ジールは文字通りの“ウルトラ・レディ”だった訳ね」
“そ、そんな。あまり持ち上げられても、後が怖いのですが……”
笑声を漏らす三人に対し、ジールは弱ったようにオロオロとするばかりである。
と、その時、洋美の懐で携帯が着信音を発した。
すぐに通話を開始した洋美は、何かに気づいたかのように、若干意外そうな表情を作った。
ややあって携帯を切ると、改めて城島に向き直る。
「ごめんなさい、城島さん。あと二・三分で迎えがこの近くに到着するそうなんです」
「そうか、それは急がないとな。……剣持君が相手となると、見送りは遠慮しておくのがマナーかな?」
「そ、そこまで気にしなくても良いですよ」
「ははは、まあ今日の所は、これでお開きという事にしておこうか」
その後、食器類の片付けなどを全て引き受けると、城島は洋美は洋美を自宅から送り出した。
そして、キッチンに戻った巨漢の同化者が、昼食の後片付けを始めようとした時であった。
その懐で携帯が鳴り出し、本来穏和なはずの男の表情を、俄に厳しい物へと変えた。
「もしもし?」
『非番の所を失礼致します、隊長。こちら伊崎です』
「どうした?」
『山梨県塩山に着弾した怪獣用ポッドに、変化が生じました。内部の巨大生物の生体反応が急上昇しています。このままでは数時間後に覚醒するのは避けられません』
「周辺住民の避難は?」
『この連絡と同時に、渡辺が自治体へ手配しています』
「ご苦労。俺も今すぐ基地へ向かう」
『分かりました、お待ちしています』
伊崎の了承を受けた城島は、携帯を切ろうとして、ふと何かに気づいた顔となる。
「すまん伊崎、もう一つ聞きたい。……DEMIOには連絡を取ったのか?」
『……いえ、今から一報を入れる所でした』
「そうか。なら、今日は彼らへの連絡は可能な限り遅らせてくれ。俺にちょっとした考えがあってな」
『わかりました。そういう事でしたら、隊長のご命令通りに手配致します』
どこか要領を得ない調子の伊崎が電話を切ると、城島はリビングの衣装掛けからジャケットの上着を引っ掴んで玄関へ向かってゆく。
その過程で、珍しくシャディスが口を開いた。
“なあ城島。ヒロミたちへの連絡を遅らせるって事は……”
「ああ。今日は俺とお前で怪獣を始末しようぜ、シャディス。せめて誕生日くらい、彼女たちには休日を満喫させてやろうじゃないか」
“文字通り俺たちからの誕生プレゼントって訳か“
「まあな。あんないい話見せられちゃ、男として恰好の一つも付けたくなるって物さ」
“へっ、さすがは俺の同化者。よく分かってるじゃねえか”
戦神の言葉に大きく頷くと、城島は家の扉を大きく開け放ち、光降り注ぐ午後の東京へ歩み出してゆく。
その大きな背は、まさに白銀の戦神シャディスと同じ逞しさを備えていたのだった。
第二十話に続く
その間、洋美はとうに空になっていたジョッキへ、隣室の冷蔵庫から持ってきたアイスコーヒーを注ぎ直していた。
そのまま、感慨深そうな顔で黙ってコーヒーを口にする二人の同化者。
意外な沈黙に、痺れを切らしたのはシャディスの方であった。
“なあ、惑星ジールの人間でも滅多に見られない記録映像なんだぞ。何か感想とかはないのか?”
「ああ、素晴らしい物を見せて貰った。ありがとう」
紛れもない充実感を感じている城島の声。
“内容自体に言う事はないのか?”
「あるにはあるが、映画のように簡単に語れる物でもないだろう。実際に戦火の時代を生き、大事な人を失った者の心情を慮ればなおさらだ」
デリカシーに溢れすぎた城島の調子に、どこか拍子抜け調子のしたシャディス。
見かねた洋美が笑顔で発言した。
「だったら、私から質問。今見てきた人たちのその後について、差し支えのない範囲で聞かせて貰えたら嬉しいわ」
“お、良い質問だぜ、ヒロミ。で、まず誰の事を聞きたい?”
「そうね。まずはジールの兄弟のメルネデさん」
“良い所を付くな。今現在、あいつは新しい上等執行官候補生の教育で、母星とは別の宙域に赴任中だ。俺らより全然楽な任務なんで、かなりのびのびとやってるらしいぜ”
ほほー、と同化者二人が感嘆の意を示す。
「だったら、メルネデさんと同化していたレーゼさんは?」
“レーゼさんは、あの映像の後も模範的な軍務官として忠実に任務をこなし、定年による退任時には一等宙将にまで昇進しました。地球時間換算にして九十六歳で老衰を迎えましたが、沢山のお子さんに恵まれ幸せな一生だったと言います”
今度は、ジールがレーゼのその後を、大ざっぱに解説する。
「あと、主役以外で印象深いって言うと……ネルザスの五柱将軍とかは?」
“あいつらは、その後も何度となくやり合ったさ。結局生きていたベルシェンクの野郎は、捕虜交換でネルザスに返さなきゃならなかったしな”
“しかし、最後の会戦の後、我々はネルザスの支配者階級のゼイルマーとバルゲイツを倒し、エリンザロス・ベルシェンク・ガリエネーダ・ザリエンテスを捕虜として、母星の地下に眠らせたまま捕虜としています”
「ほう。ネルザス側も、意外と生き残っている物なんだな」
その辺りの事情は、地球の軍事情勢と共通点を見いだせるらしく、城島が意表をつかれたように感心していた。
「まぁな。ただ、その後こっちもフェルドーンとルデリアンが戦傷で引退、メナは艦隊戦で宇宙に散った。……つくづく、戦争なんてこの世から無くなっちまえと思うぜ」
吐き捨てるように言ったシャディスの言葉は、この場の四人全員に共通している思いであった。
若干沈みかけた雰囲気の中、今度は城島が口を開く。
「お前さんの好敵手、宇宙海賊ディークロイストはどうなった? お前の手で逮捕できたのか?」
“ま、まだだよ。奴は今も義賊気取りで、法の網の目を潜り抜けて私服を肥やすバカどもなんかを狙って、この銀河中飛び回ってるよ”
「なるほどな」
そこで一端言葉を切った城島は、思い当たる最後の一人の名を口にする。
「で、先ほどの物語の主役とも言えるレディエーヌなんだが……」
過去の惑星ジールの危機を救った、麗しき剣の戦乙女。その彼女におきた悲劇を思い返し、城島の言葉の語尾は若干ながら曇っていた。
その問いに答えたのは、意外にも同じ同化者の洋美であった。
「私、レディエーヌのその後の事、知ってるわ。城島さん」
「志賀さんが?」
素直に驚く城島に対し、洋美はどことなく得意げな、それでいて優しさを含んだ笑顔を浮かべていた。
「彼女なら、今もこの地球で結構充実した時間を過ごしていると思うな。……ねっ、そうでしょ? ジール」
瞬き二回分ほどの時間を置いて、城島も洋美の言わんとしている事に気がついた。
「……なるほど、そういう事か」
対するジールは、やや答えづらそうに口を開いた。
“……いつから、気づいていたのですか? 洋美さん”
「レディエーヌの姿を最初に見た時、直感的にね。その後、言葉を聞いたり、行動を見たりしている内に確信に変わっていったわ。最後の方になると、もうレディエーヌの事はあなたとしてしか見られなかった」
二人の絆の深さから言えば、洋美がレディエーヌを現在のジールと同一人物と気づいても、特に不思議な事ではない。
それでも、ジールは嬉しそうであった。
“確かにあの時の私は、レディエーヌ・バーディスラウドという名を持った、一人のメナ人の軍務官でした。……それにしても、その眼力はさすがと言うべきですね。洋美さん”
「ふふっ、もう一人の自分の事を気づけないようじゃ、同化者やってる資格はないわよ」
諧謔味を帯びた物言いに、四人がそれぞれ微笑を漏らして場が和む。
そんな中、再びジールが言葉を綴った。
“あの戦いから暫くしてのち、私は自分のような思いをする者を少しでも減らしたいという思いと、ネルザスに対する復讐心とで、執行官となる事を希望しました”
己の過去を語るジールだが、その調子は意外なほど淡々としている。
“ま、今の映像を見て分かる通り、ジールは強制進化の適用以前から、何事につけ天才と呼ぶに相応しい娘だった。……上等執行官になるのにそう時間はかからなかったよ”
「それは俺も思った。本当の文武両道という奴だったな」
シャディスに城島が追従すると、ジールは照れたような雰囲気を見せる。
そこに洋美が追撃の言葉を放つ。
「同感。ジールは文字通りの“ウルトラ・レディ”だった訳ね」
“そ、そんな。あまり持ち上げられても、後が怖いのですが……”
笑声を漏らす三人に対し、ジールは弱ったようにオロオロとするばかりである。
と、その時、洋美の懐で携帯が着信音を発した。
すぐに通話を開始した洋美は、何かに気づいたかのように、若干意外そうな表情を作った。
ややあって携帯を切ると、改めて城島に向き直る。
「ごめんなさい、城島さん。あと二・三分で迎えがこの近くに到着するそうなんです」
「そうか、それは急がないとな。……剣持君が相手となると、見送りは遠慮しておくのがマナーかな?」
「そ、そこまで気にしなくても良いですよ」
「ははは、まあ今日の所は、これでお開きという事にしておこうか」
その後、食器類の片付けなどを全て引き受けると、城島は洋美は洋美を自宅から送り出した。
そして、キッチンに戻った巨漢の同化者が、昼食の後片付けを始めようとした時であった。
その懐で携帯が鳴り出し、本来穏和なはずの男の表情を、俄に厳しい物へと変えた。
「もしもし?」
『非番の所を失礼致します、隊長。こちら伊崎です』
「どうした?」
『山梨県塩山に着弾した怪獣用ポッドに、変化が生じました。内部の巨大生物の生体反応が急上昇しています。このままでは数時間後に覚醒するのは避けられません』
「周辺住民の避難は?」
『この連絡と同時に、渡辺が自治体へ手配しています』
「ご苦労。俺も今すぐ基地へ向かう」
『分かりました、お待ちしています』
伊崎の了承を受けた城島は、携帯を切ろうとして、ふと何かに気づいた顔となる。
「すまん伊崎、もう一つ聞きたい。……DEMIOには連絡を取ったのか?」
『……いえ、今から一報を入れる所でした』
「そうか。なら、今日は彼らへの連絡は可能な限り遅らせてくれ。俺にちょっとした考えがあってな」
『わかりました。そういう事でしたら、隊長のご命令通りに手配致します』
どこか要領を得ない調子の伊崎が電話を切ると、城島はリビングの衣装掛けからジャケットの上着を引っ掴んで玄関へ向かってゆく。
その過程で、珍しくシャディスが口を開いた。
“なあ城島。ヒロミたちへの連絡を遅らせるって事は……”
「ああ。今日は俺とお前で怪獣を始末しようぜ、シャディス。せめて誕生日くらい、彼女たちには休日を満喫させてやろうじゃないか」
“文字通り俺たちからの誕生プレゼントって訳か“
「まあな。あんないい話見せられちゃ、男として恰好の一つも付けたくなるって物さ」
“へっ、さすがは俺の同化者。よく分かってるじゃねえか”
戦神の言葉に大きく頷くと、城島は家の扉を大きく開け放ち、光降り注ぐ午後の東京へ歩み出してゆく。
その大きな背は、まさに白銀の戦神シャディスと同じ逞しさを備えていたのだった。
第二十話に続く
Zeal of Ultralady 第十九話『戦神からの贈り物』 Part13-1
13
「……ど、どうして? キーは正式な管理者の物のはずだわ!」
『お答え致します。当該プログラムは、量子暗号化されたプロテクトによって保護されており、指示者の量子反応を検知して初めて修正及び撤回が可能となります』
無機質な人工知能の声に、レディエーヌはたまらず歯噛みした。
量子とは物理の最小単位である。
その世界は、地球の一般人が普通に思いつく物理法則の範疇に収まらない反応に満ちた物であり、生体もまた独自の量子反応を脳に備えていると言われている。
物理的に言えば、観測された段階で状態が決定するという量子の特性上、他者の量子反応を再現することは絶対に不可能である。
それを鍵として使っているとなると、もはや解除できるのはプログラムを設定した本人だけとなる。
そして、レディエーヌは設定した本人であるバリオール星人を倒してしまった。
もはや、プログラムを正常な手段で止める事は不可能である。
一瞬だけ苦い表情を見せたレディエーヌは、即座にコンソールへ指を這わせつつ、人工知能へ別の質問を飛ばした。
「他に量子暗号化プロテクトをかけられたシステムはない?」
『地下対消滅炉の作動プログラムのみです』
「対消滅炉も、か。当然よね……」
相当を受けた美貌の軍務官は、一瞬だけ躊躇うような仕草を見せた後、徐に複数のシステムのコントロールを自分の下へ集中させた。
そして、施設内どころか周辺一帯へ聞こえる精神波通信をもって、全ての同胞へ呼びかけたのである。
『惑星ジールの同胞の皆様へ。私は当該施設管理官の一人、レディエーヌ・バーディスラウド一等宙尉です。たった今、施設中枢の第一制御室の支配権を取り返しました』
即座に周囲のコンソールから、接触を求める着信音が響き渡る。
精神波の通信を受けた同胞からの連絡に間違いないが、レディエーヌはそれを無視して続けた。
『ですが、空間障壁発生機関に仕掛けられた、ネルザス艦隊専用の施設橋頭堡化プログラムは量子暗号化されており、解除する事は不可能でした。そのため、たった今をもって当該施設を破壊致します』
言ったレディエーヌは、そこで目眩を感じでコンソールに手を付き、息を荒げた。
『施設の防衛に当たられている方の現在地は、こちらで全て把握していますので最寄りの転移装置の機能を回復させます。どうか、それでテスエンセルバ市街の星域防衛省施設へ脱出して下さい』
言うが早いか、レディエーヌは人工知能に言葉通り、待避用の空間転移装置の機能を再起動させる指示を飛ばした。
やがて、コンソール上に表示された、施設内に存在する同胞の数が見る見る少なくなり、二分ほどで全てのメナ人の強制待避が完了する。
「あとは、施設内の全動力装置に最高レベルの保護をかけた上で、全ての記録を星域防衛省本部へ送信。その後、構造体を構成するブロックを全てパージ。……この施設を廃棄して」
『施設の廃棄は最上級機密司令となります。現在使用されている施設起動キーの他に、使用者の生体認証を併用しつつ、廃棄プログラムを段階的に承認してゆく必要が生じます。施設の機能に依存しない脱出手段は確保されていますか?』
「ないわ。でも、そのまま進めて」
『了解しました。では、最終確認です、レディエーヌ・バーディスラウド管理官。その指示を実行すると、施設内の転移装置は機能を停止する事になります。脱出路を失った貴官も、生命の危機に晒される事になりますが、それでも実行致しますか?」
「構わないわ。これだけの施設を独断で廃棄するんだもの。……せめて、責任は取らなければ」
『了解致しました。施設廃棄プログラムの実行を開始します』
その言葉に、ゆっくりと頷いたレディエーヌは、ようやく力尽きるように床へ崩れ落ちた。
直に床へ腰を落とし、コンソールに背をもたれると、満足げな表情で目を閉じた。
「これで、この星も大丈夫かな……」
その後、施設廃棄に際しての幾つかのをプログラムへ承認を下し、最後の物理的崩壊の是非を問う確認が問いかけられる。
『最終確認です。物理的手段により、当該施設を解体しますか?』
「はい」
『了解しました。それでは、この指令受諾をもって当施設は全ての機能を停止致します』
穏やかに目を閉じたレディエーヌの全身を、ビリビリとした大気の振動が包み込む。
施設の大重量が崩壊してゆく際の物であろう。
そして、ついにレディエーヌのいる最上階層も、一度大きな衝撃が走ったかと思うや、部屋全体が宙に浮く感覚に見舞われた。
施設の骨格たる無数の支柱から、階層がブロックごとパージされたのである。
十数秒後には、勇敢な美しき令嬢も、この制御室ごと粉々となって灰燼に帰すであろう。
「……さようなら、みんな」
レディエーヌが言った、まさにその瞬間。
鮮紅色の巨大な手が壁をぶち破り、落下を続ける第二コントロールルームに進入して来たのである。
そして、巨大な腕はまるで奇跡のごとき正確さで、床に伏した美貌の軍務官をすくい上げていた。
衝撃と轟音に、僅かな間だけ意識が飛んでいたレディエーヌ。
その彼女が再び気がついた時、そこは宙に浮く白銀の戦神の右腕の上であった。
「こ、ここは……シャディス様の手の……上?」
“ああ。間一髪だったぜ”
最高のタイミングで親友の娘を助け出した割に、シャディスの口調はどこか渋かった。
「という事は、シャディス様の方は、五柱将軍たちを倒されたのですね?」
“まあな”
敵の侵攻軍をほぼ一人で撃滅したにも関わらず、戦神は極めて不機嫌そうな調子であった。
「でも、なぜ私などを助けたのですか? 私は使命を果たし、もう帰りを待つ人もいないというのに……。下手をすれば、シャディス様まで施設の崩壊に巻き込まれる危険性があったのですよ?」
レディエーヌがそう言った瞬間、ついにシャディスが激発した。
“この大バカ娘がっ! 仮にも父親の目の前で、生きることを投げ出すたぁ、一体どういう了見だ!!”
精神波でありながら、それを聞くレディエーヌはおろか、地上で佇むメルネデまでが居竦むほどの雷喝であった。
“俺は、かつてヴェルドールと存在を共にし、お前の誕生に際しても、実の娘が出来たとしか思えねえほど嬉しかった。……それを、こんな事で見殺しにさせようとするんじゃねえよ”
「あ……」
その時、初めてレディエーヌの大きな目から、涙の雫がこぼれ落ちた。
“それさえ目を瞑れば、お前は本当によくやったよ。メルネデたちと並んで、俺にとって最高の娘だ”
「そんな、私……父が戦いで亡くなったと聞いて、一人になったと思っていたのに……」
“バカな事を言うもんじゃねえ。俺がいる限り、お前の事は決して一人になんかさせねえよ”
レディエーヌが顔を上げると、生まれて以来、ずっと見慣れていたシャディスの顔に微笑が浮かんでいるのがわかった。
それを認めた瞬間、ついに美しき剣の達人は我慢する事をやめた。
「お、お父様っ! わ、私はっ、私はっ、うわあああああああっ!!」
今まで、己を襲った悲劇に耐えていたレディエーヌ。
彼女は、ようやく己の正直な心をさらけ出し、巨大な指に縋り付いて声を張り上げた。
まだ父親に等しい存在が残されているとは言え、レディエーヌにとって血縁の全てを失った事は決して生やさしい現実ではない。
それでもシャディスは、この小さな娘が今回見せた強さを思い起こして確信する。これからも、彼女は決して己に降りかかる苦難に屈することはないであろう、と。
そして、全ての景色は、地表を照らす星々の輝きと、色鮮やかな星雲に満ちた空へ流れとてゆく。
映像はそこで終わった。
Zeal of Ultralady 第十九話『戦神からの贈り物』 Part12-2
ネルザス五柱将軍筆頭のベルシェンクは、己に内在するエネルギーの大半を、巨大なプラズマの奔流として宿敵に放射し続けていた。
銀河最強の戦闘種族と呼ばれるだけあり、ネルザス星人という人種は物理的な手段に寄らず、敵の気配や存在を察知する事に恐ろしく長けている。
その能力が、己の膨大なエネルギーの流れの向こうに、シャディスが健在である事を否応なく伝えて来るのだ。
しかし、数秒を経ても一向に変化がない戦神の気配に、竜将が訝りの表情を見せた瞬間であった。
プラズマの奔流の中から鮮紅色の巨腕が打ち出され、ベルシェンクの顔面へ強かな痛打を浴びせている。
「グガッ!……バカな、私の熱線を受けて無傷だと?」
あまりの衝撃に視界が揺れ、たまらず俯いて頭を振った暗灰色の竜将は、呻きながら顔を上げた。
だが、ここまで一切冷静さを崩さなかったネルザス屈指の武人が、目前に存在している物を見据えるや、目を剥いて硬直した。
銀と赤の模様の判別がつかぬほど全身を焼けただれさせ、それでも微動だにせず直立している戦神の姿。
その手にある巨大な銃器の銃口が、己の顔面から僅か一メートル足らずの距離に突きつけられていた。
「な、なぜだ。なぜ貴様はその傷で立っていられる!」
“ここは、親友や娘たちが命を張って俺を立たせてくれた戦場だぜ? 殺されねえ限り止まれる訳ねえだろ”
「なるほど。親しき者達への義理、か」
“絆とも言うがな。……さて、艦載砲を改造したこの俺用の武器、このままぶっ放されたくなきゃ降服しろや”
「できると思うか?」
ベルシェンクの答えは即答だった。
対するシャディスも僅かに苦笑した。
“確かにな。ま、こいつ出力も俺のエネルギーに依存してるから、艦載砲だった時よりは威力が低い。運が良きゃ死なずに済むだろ。……とりあえず、あばよ”
白銀の戦神は何の感慨もなく、一息に引き金を引いた。
第二オペレーティングルームへ突入したレディエーヌもまた、死闘のただ中にあった。
奇襲により即座に二体を始末したものの、迎撃態勢を整えた三体目と四体目の完璧な連携を切り崩した時点で、もはや体力が尽きかけていた。
敵の数を最後の一体とした時点で、自分でもわかるほど体の動きが鈍って来る。
目にする景色の中、視界の外側から徐々に霞みがかり、視野狭窄にも似た現象に見舞われる若き女軍務官。
もはや余力はない。
一刻も早く敵を倒し、施設の機能を正常に戻さねば、いつ自分の意識が途切れるか定かではなかった。
己の状態を自覚した瞬間、レディエーヌは前に出た。
傷を負うまでは、烈風のごとき速さと激しさを備えていた足捌きも、今では陽炎のように不確かな緩やかさであった。
今までは心拍数と血圧の上昇によって見えていた敵の攻撃も、ここまで身体能力が低下させられては、軌道を読むのが精一杯である。
矢継ぎ早に繰り出されるバリオール星人の斬撃に、力尽きる寸前の麗しき才女は、反撃の糸口も掴めぬまま、一方的に後方へ押しやられてゆく。
それでも致命打を避け続けていられるのは、日々のずば抜けた研鑽の量と、ここまでに経験した敵の攻撃方法の知識による物である。
力と速度を失った事により、レディエーヌは流水のごとき停滞のない身ごなしを見せ、敵の力に合わせた最も無駄のない回避方法を選択していた。
「今の私には、敵の装甲の継ぎ目へ正確に刃筋を合わせられる力は残っていない……。でも……」
霞む視界、ふらつく足捌き。
立っているのがやっとの状態でありながら、レディエーヌはただ一心に何かを待っていた。
何十打目かの猛撃を躱したその時、血染めのシャツに覆われたその背が、部屋の内壁に当たった。
文字通り壁際に追い詰められたレディエーヌに向け、バリオール星人は一際大きく腕を振りかぶり、最大の一撃を叩きつける。
そして、それこそがこの麗しき剣の達人が待っていた物であった。
見開かれる目。復活する疾風のごとき踏み込み。
温存していた力の全てを剣身へ注ぎ込み、狙うは今まさに自分へ振り下ろされる巨腕の一撃。
レディエーヌのカウンターは斬撃ではなかった。
敵の刃のごとき腕へ、自らの剣の腹を沿わせ、円運動を駆使してその軌道を強制的に修正したのである。
「GOGYAAAAAAAAAAAA!」
響き渡る絶叫は、自らの鎌のごとき腕で己の腹部を貫かされた、バリオール星人の物である。
レディエーヌの追撃は、まさに神速であった。
大きく仰け反り、装甲の継ぎ目を露わにした敵の上半身へ、飛翔するが如き跳躍で肉薄するや、ただの一閃のみで首を叩き落としている。
空中でトンボをきって床に着地すると、たまらず腰が落ち、四つん這いのような体勢になってしまう。
「まだよ……。これで終わりじゃない……今、目を閉じる訳にはいかない……」
剣を杖にし、震える体を引きずるように、レディエーヌはメインコンソールへ近づいた。
そして、ついに手にした予備起動キーを、対応する鍵穴に差し込み、システムへ再起動を促す。
『キーによる認証を正式な物と確認。システムを起動します』
地球の文化でいう音声案内が流れ出し、レディエーヌは安堵したように薄く笑った。
次いで、コンソールを操作し、惑星ジールの地表を半径一千キロメートルに渡って力場で覆わんとするプログラムを見つけ出す。
「このプログラムを破棄し、全てのシステムを基本の物に修正するよう、管理者権限をもって指示します」
これだけだ。
この言葉に受諾の応答が出れば、それで戦いは終わる。
しかし、次の一瞬でレディエーヌは我が耳を疑った。
『指示の実行は不可能です。別の指示を願います』
銀河最強の戦闘種族と呼ばれるだけあり、ネルザス星人という人種は物理的な手段に寄らず、敵の気配や存在を察知する事に恐ろしく長けている。
その能力が、己の膨大なエネルギーの流れの向こうに、シャディスが健在である事を否応なく伝えて来るのだ。
しかし、数秒を経ても一向に変化がない戦神の気配に、竜将が訝りの表情を見せた瞬間であった。
プラズマの奔流の中から鮮紅色の巨腕が打ち出され、ベルシェンクの顔面へ強かな痛打を浴びせている。
「グガッ!……バカな、私の熱線を受けて無傷だと?」
あまりの衝撃に視界が揺れ、たまらず俯いて頭を振った暗灰色の竜将は、呻きながら顔を上げた。
だが、ここまで一切冷静さを崩さなかったネルザス屈指の武人が、目前に存在している物を見据えるや、目を剥いて硬直した。
銀と赤の模様の判別がつかぬほど全身を焼けただれさせ、それでも微動だにせず直立している戦神の姿。
その手にある巨大な銃器の銃口が、己の顔面から僅か一メートル足らずの距離に突きつけられていた。
「な、なぜだ。なぜ貴様はその傷で立っていられる!」
“ここは、親友や娘たちが命を張って俺を立たせてくれた戦場だぜ? 殺されねえ限り止まれる訳ねえだろ”
「なるほど。親しき者達への義理、か」
“絆とも言うがな。……さて、艦載砲を改造したこの俺用の武器、このままぶっ放されたくなきゃ降服しろや”
「できると思うか?」
ベルシェンクの答えは即答だった。
対するシャディスも僅かに苦笑した。
“確かにな。ま、こいつ出力も俺のエネルギーに依存してるから、艦載砲だった時よりは威力が低い。運が良きゃ死なずに済むだろ。……とりあえず、あばよ”
白銀の戦神は何の感慨もなく、一息に引き金を引いた。
第二オペレーティングルームへ突入したレディエーヌもまた、死闘のただ中にあった。
奇襲により即座に二体を始末したものの、迎撃態勢を整えた三体目と四体目の完璧な連携を切り崩した時点で、もはや体力が尽きかけていた。
敵の数を最後の一体とした時点で、自分でもわかるほど体の動きが鈍って来る。
目にする景色の中、視界の外側から徐々に霞みがかり、視野狭窄にも似た現象に見舞われる若き女軍務官。
もはや余力はない。
一刻も早く敵を倒し、施設の機能を正常に戻さねば、いつ自分の意識が途切れるか定かではなかった。
己の状態を自覚した瞬間、レディエーヌは前に出た。
傷を負うまでは、烈風のごとき速さと激しさを備えていた足捌きも、今では陽炎のように不確かな緩やかさであった。
今までは心拍数と血圧の上昇によって見えていた敵の攻撃も、ここまで身体能力が低下させられては、軌道を読むのが精一杯である。
矢継ぎ早に繰り出されるバリオール星人の斬撃に、力尽きる寸前の麗しき才女は、反撃の糸口も掴めぬまま、一方的に後方へ押しやられてゆく。
それでも致命打を避け続けていられるのは、日々のずば抜けた研鑽の量と、ここまでに経験した敵の攻撃方法の知識による物である。
力と速度を失った事により、レディエーヌは流水のごとき停滞のない身ごなしを見せ、敵の力に合わせた最も無駄のない回避方法を選択していた。
「今の私には、敵の装甲の継ぎ目へ正確に刃筋を合わせられる力は残っていない……。でも……」
霞む視界、ふらつく足捌き。
立っているのがやっとの状態でありながら、レディエーヌはただ一心に何かを待っていた。
何十打目かの猛撃を躱したその時、血染めのシャツに覆われたその背が、部屋の内壁に当たった。
文字通り壁際に追い詰められたレディエーヌに向け、バリオール星人は一際大きく腕を振りかぶり、最大の一撃を叩きつける。
そして、それこそがこの麗しき剣の達人が待っていた物であった。
見開かれる目。復活する疾風のごとき踏み込み。
温存していた力の全てを剣身へ注ぎ込み、狙うは今まさに自分へ振り下ろされる巨腕の一撃。
レディエーヌのカウンターは斬撃ではなかった。
敵の刃のごとき腕へ、自らの剣の腹を沿わせ、円運動を駆使してその軌道を強制的に修正したのである。
「GOGYAAAAAAAAAAAA!」
響き渡る絶叫は、自らの鎌のごとき腕で己の腹部を貫かされた、バリオール星人の物である。
レディエーヌの追撃は、まさに神速であった。
大きく仰け反り、装甲の継ぎ目を露わにした敵の上半身へ、飛翔するが如き跳躍で肉薄するや、ただの一閃のみで首を叩き落としている。
空中でトンボをきって床に着地すると、たまらず腰が落ち、四つん這いのような体勢になってしまう。
「まだよ……。これで終わりじゃない……今、目を閉じる訳にはいかない……」
剣を杖にし、震える体を引きずるように、レディエーヌはメインコンソールへ近づいた。
そして、ついに手にした予備起動キーを、対応する鍵穴に差し込み、システムへ再起動を促す。
『キーによる認証を正式な物と確認。システムを起動します』
地球の文化でいう音声案内が流れ出し、レディエーヌは安堵したように薄く笑った。
次いで、コンソールを操作し、惑星ジールの地表を半径一千キロメートルに渡って力場で覆わんとするプログラムを見つけ出す。
「このプログラムを破棄し、全てのシステムを基本の物に修正するよう、管理者権限をもって指示します」
これだけだ。
この言葉に受諾の応答が出れば、それで戦いは終わる。
しかし、次の一瞬でレディエーヌは我が耳を疑った。
『指示の実行は不可能です。別の指示を願います』
Zeal of Ultralady 第十九話『戦神からの贈り物』 Part12-1
12
力対技。
そんな形容がこの上なく当てはまる戦いであった。
故郷を荒らされ、義娘を傷つけられ、親友を亡き者にされた戦神の怒りは、まさに天変地異とさえ形容できるほどの物であった。
ネルザスの上位種すら凌駕する力の打撃により、拳を打ち合わせるベルシェンクの顔面は赤黒い血の色に染まっている。
だが、銀河一の侵略王朝の軍において、実戦部隊の頂点に立つ男は、それだけで沈められるほど容易い相手ではなかった。
元よりネルザスの上位種は、力の面においては、平均的な執行官を大きく上回っている。
それに加え、このベルシェンクという歴戦の戦士は、研鑽によって自らの力を爆発的に増幅させる技法を戦闘スタイルとして確立していた。
生まれ持った力を、ずば抜けた闘争本能のまま振るう者の多いネルザス星人の中で、この暗灰色の竜将は、戦闘の合理化を実践している数少ない存在であった。
その成果なのであろう。
シャディスは、繰り出す攻撃に対し、かなりの数の反撃をカウンターとして白銀の体に叩き込まれている。
力で押すシャディスに、技で応じるベルシェンク。
メナ人とネルザス星人、双方の本質とは正反対の構図となった戦い。
互いに、ほぼ同程度の肉体的ダメージを負っている所からして、明らかに実力は拮抗していた。
「さすがは最強の執行官といった所だな……。私も相当腕を上げてこの宙域に戻って来たつもりだったが」
言いつつ、ベルシェンクが口腔に溜まった血を吐き捨てた。
“当たり前だろ。執行官の最年長として、敵の三番手に躓いてられるかよ”
「残念だが、私はすでに四番手だ。今やギゼンダ殿下のお力は、私のそれを越えている」
“なにぃ? 俺が先陣切って当たらなきゃならん相手がまた増えたのかよ”
「案ずるな。貴様は、今日ここで執行官の役目から解放される。……この私の手によってな!」
“へっ、好きに行ってろ!”
露骨な挑発に対して好戦的な笑みを浮かべると、シャディスは勢いよくベルシェンクに殴りかかる。
しかし、不用意な突進のツケは大きかった。
コンビネーションの一発目をいなされるや、力を凝縮して放つ発勁のごとき打撃が、体当たりとして戦神の胸板に叩き込まれたのである。
“ゴハッ……!!”
メルネデが倒された時以上の衝撃をくらい、背後へ大きく突き飛ばされると、シャディスは緩慢に片膝を地に落とした。
「やはり、冷静さを欠くべきではなかったな。……さらばだ、シャディス!」
初めからこの展開を予想していたのであろう。
すでに十分エネルギーを蓄積していたベルシェンクは、ガリエネーダやザリエンテスを遙かに凌駕する破壊力の放射熱線を解き放った。
“ち、ちくしょおおおおおおおっ!”
大気を灼き、地を抉って突き進む破壊の光。
だが、その標的とされた当のシャディスは、それまでのダメージが嘘であるかのように、すっくとその場に立ち上がった。
さらには、僅かに口の端を吊り上げながら、その場の誰もが予想だにしなかったセリフを述べたのである。
“……なんてな”
「ぐっ……。はぁ、はぁ……」
テスエンセルバ空間障壁発生施設、地上1400メートルの高度にレディエーヌは到達していた。
だが、その姿は、特に気の弱い者でなくとも、思わず目を背けたくなるような痛々しい物であった。
バリオール星人の斬撃によって、左肩から背に至る範囲を大きく切り裂かれ、柄の刺繍されたシャツを赤黒く染めている。
その他にも、体の各所に様々な種類の傷が刻みつけられているのは、大きなダメージによって戦闘能力が衰えたためであろう。
これがあの凛然とした大貴族の令嬢かと思うほど、凄絶な姿であった。
負傷の度合いは、すでにこの時点で、命に危険が及ぶレベルと言える。
最初の一撃を受けて以来、すぐに手近な救護室に駆け込み、オートメーション化された医療機械による簡易手術とナノマシン治療を施してはいたが、時間をかけた専門の設備にかなうべくもない。
輸血などもこなし、当面の命の危機は回避したものの、それは絶対安静という条件付きでの事である。
ところが、この亜麻色髪の女軍務官は、その場で出来るだけの治療を自分に施すと、再び幽鬼のような危うい足取りで戦いに赴いたのである。
それ以降、神がかった剣の腕前で、無数の戦闘を潜り抜けたレディエーヌ。
自分でも、途中で力尽きる可能性の方が高い事は覚悟していたが、一つの僥倖が彼女を目的地に大きく近づけた。
機能の生きている施設内空間転移装置が存在したのである。
管理者権限を持つ施設の予備起動キーにより、端末を介して出口側の状況が把握できるのも大きかった。
そして、一応の安全を確認したレディエーヌは、意を決して上層階に飛んだのである。
集積した膨大なエネルギーを、様々な用途に割り振るための第一オペレーティングルームは、施設のほぼ最上層に位置している。
階層中央のエントランスに設置された転移装置から、オペレーティングルームまでの道のりは、不自然なほど静寂に満ちていた。
敵の影はおろか、防衛部隊との戦闘が行われたという痕跡さえ見あたらない。
体力の尽きかけたレディエーヌにとっては、むしろ幸運な展開と言えた。
ついに目的の部屋の目前まで辿り着いた若き女軍務官は、全く緊張を解かずに室内の様子を伺った。
さすがに、室内には抵抗の痕がそこかしこに点在していた。
飛び散った赤と青の血糊。床や壁面に刻みつけられた傷痕。そして、部屋の一角に纏められた管理官たちの遺体。
施設の最上層は、中枢部を円筒状に囲む形状となっており、第一オペレーティングルームもそこの一角を区切った扇状の間取りとなっている。
ケイ素コーティングされた光沢のある暗灰色の室内の中央には、本来室長クラスの管理官のみが操作を許されるメインコンソールが鎮座している。
一度奪取した重要施設の中枢を確保するバリオール星人は、ここまでの激戦を突破してきたレディエーヌには信じがたい事に、たったの四体のみであった。
だが、ここまでの相手より明らかに大柄な体格を備えたその四体は、施設の制御コンソールとは別の、ヘッドフォン状の通信機を通してどこかと連絡を取っている。
言語自体はバリオール星人独自の物らしく、様子を伺うレディエーヌにさえ意味を知る事はできなかった。
だが、ここまでの道程と、内部の様子で事情はわかった。
つまり、惑星ジール側の勢力は、まだ敵に対して抵抗を続けているのである。
施設防衛の根幹たる対巨大生物用障壁のコントロールを奪われていない事が、その証明とも言える。
そのため、既に制圧を終えた基幹部には少数の管理要員のみを置き、残りの手勢を交戦区域に集中して送り出した。という構図と見て間違いない。
つまり、今レディエーヌが目にしている四体さえ打ち倒せば、自らの持っているキーで施設を正常な状態へ戻す事が可能なはずであった。
麗しき剣の女神は、汗に濡れ、披露と負傷によって隈さえ浮き出ている白皙の美貌を引き締め直した。
「これで最後……。最悪でもここの機能を止めさえすれば、ネルザス艦隊の橋頭堡にされる事はなくなる。……行こう」
そして、レディエーヌもまた、重傷者とは思えぬ神速で、最後の戦場へ飛び込んでいった。
力対技。
そんな形容がこの上なく当てはまる戦いであった。
故郷を荒らされ、義娘を傷つけられ、親友を亡き者にされた戦神の怒りは、まさに天変地異とさえ形容できるほどの物であった。
ネルザスの上位種すら凌駕する力の打撃により、拳を打ち合わせるベルシェンクの顔面は赤黒い血の色に染まっている。
だが、銀河一の侵略王朝の軍において、実戦部隊の頂点に立つ男は、それだけで沈められるほど容易い相手ではなかった。
元よりネルザスの上位種は、力の面においては、平均的な執行官を大きく上回っている。
それに加え、このベルシェンクという歴戦の戦士は、研鑽によって自らの力を爆発的に増幅させる技法を戦闘スタイルとして確立していた。
生まれ持った力を、ずば抜けた闘争本能のまま振るう者の多いネルザス星人の中で、この暗灰色の竜将は、戦闘の合理化を実践している数少ない存在であった。
その成果なのであろう。
シャディスは、繰り出す攻撃に対し、かなりの数の反撃をカウンターとして白銀の体に叩き込まれている。
力で押すシャディスに、技で応じるベルシェンク。
メナ人とネルザス星人、双方の本質とは正反対の構図となった戦い。
互いに、ほぼ同程度の肉体的ダメージを負っている所からして、明らかに実力は拮抗していた。
「さすがは最強の執行官といった所だな……。私も相当腕を上げてこの宙域に戻って来たつもりだったが」
言いつつ、ベルシェンクが口腔に溜まった血を吐き捨てた。
“当たり前だろ。執行官の最年長として、敵の三番手に躓いてられるかよ”
「残念だが、私はすでに四番手だ。今やギゼンダ殿下のお力は、私のそれを越えている」
“なにぃ? 俺が先陣切って当たらなきゃならん相手がまた増えたのかよ”
「案ずるな。貴様は、今日ここで執行官の役目から解放される。……この私の手によってな!」
“へっ、好きに行ってろ!”
露骨な挑発に対して好戦的な笑みを浮かべると、シャディスは勢いよくベルシェンクに殴りかかる。
しかし、不用意な突進のツケは大きかった。
コンビネーションの一発目をいなされるや、力を凝縮して放つ発勁のごとき打撃が、体当たりとして戦神の胸板に叩き込まれたのである。
“ゴハッ……!!”
メルネデが倒された時以上の衝撃をくらい、背後へ大きく突き飛ばされると、シャディスは緩慢に片膝を地に落とした。
「やはり、冷静さを欠くべきではなかったな。……さらばだ、シャディス!」
初めからこの展開を予想していたのであろう。
すでに十分エネルギーを蓄積していたベルシェンクは、ガリエネーダやザリエンテスを遙かに凌駕する破壊力の放射熱線を解き放った。
“ち、ちくしょおおおおおおおっ!”
大気を灼き、地を抉って突き進む破壊の光。
だが、その標的とされた当のシャディスは、それまでのダメージが嘘であるかのように、すっくとその場に立ち上がった。
さらには、僅かに口の端を吊り上げながら、その場の誰もが予想だにしなかったセリフを述べたのである。
“……なんてな”
「ぐっ……。はぁ、はぁ……」
テスエンセルバ空間障壁発生施設、地上1400メートルの高度にレディエーヌは到達していた。
だが、その姿は、特に気の弱い者でなくとも、思わず目を背けたくなるような痛々しい物であった。
バリオール星人の斬撃によって、左肩から背に至る範囲を大きく切り裂かれ、柄の刺繍されたシャツを赤黒く染めている。
その他にも、体の各所に様々な種類の傷が刻みつけられているのは、大きなダメージによって戦闘能力が衰えたためであろう。
これがあの凛然とした大貴族の令嬢かと思うほど、凄絶な姿であった。
負傷の度合いは、すでにこの時点で、命に危険が及ぶレベルと言える。
最初の一撃を受けて以来、すぐに手近な救護室に駆け込み、オートメーション化された医療機械による簡易手術とナノマシン治療を施してはいたが、時間をかけた専門の設備にかなうべくもない。
輸血などもこなし、当面の命の危機は回避したものの、それは絶対安静という条件付きでの事である。
ところが、この亜麻色髪の女軍務官は、その場で出来るだけの治療を自分に施すと、再び幽鬼のような危うい足取りで戦いに赴いたのである。
それ以降、神がかった剣の腕前で、無数の戦闘を潜り抜けたレディエーヌ。
自分でも、途中で力尽きる可能性の方が高い事は覚悟していたが、一つの僥倖が彼女を目的地に大きく近づけた。
機能の生きている施設内空間転移装置が存在したのである。
管理者権限を持つ施設の予備起動キーにより、端末を介して出口側の状況が把握できるのも大きかった。
そして、一応の安全を確認したレディエーヌは、意を決して上層階に飛んだのである。
集積した膨大なエネルギーを、様々な用途に割り振るための第一オペレーティングルームは、施設のほぼ最上層に位置している。
階層中央のエントランスに設置された転移装置から、オペレーティングルームまでの道のりは、不自然なほど静寂に満ちていた。
敵の影はおろか、防衛部隊との戦闘が行われたという痕跡さえ見あたらない。
体力の尽きかけたレディエーヌにとっては、むしろ幸運な展開と言えた。
ついに目的の部屋の目前まで辿り着いた若き女軍務官は、全く緊張を解かずに室内の様子を伺った。
さすがに、室内には抵抗の痕がそこかしこに点在していた。
飛び散った赤と青の血糊。床や壁面に刻みつけられた傷痕。そして、部屋の一角に纏められた管理官たちの遺体。
施設の最上層は、中枢部を円筒状に囲む形状となっており、第一オペレーティングルームもそこの一角を区切った扇状の間取りとなっている。
ケイ素コーティングされた光沢のある暗灰色の室内の中央には、本来室長クラスの管理官のみが操作を許されるメインコンソールが鎮座している。
一度奪取した重要施設の中枢を確保するバリオール星人は、ここまでの激戦を突破してきたレディエーヌには信じがたい事に、たったの四体のみであった。
だが、ここまでの相手より明らかに大柄な体格を備えたその四体は、施設の制御コンソールとは別の、ヘッドフォン状の通信機を通してどこかと連絡を取っている。
言語自体はバリオール星人独自の物らしく、様子を伺うレディエーヌにさえ意味を知る事はできなかった。
だが、ここまでの道程と、内部の様子で事情はわかった。
つまり、惑星ジール側の勢力は、まだ敵に対して抵抗を続けているのである。
施設防衛の根幹たる対巨大生物用障壁のコントロールを奪われていない事が、その証明とも言える。
そのため、既に制圧を終えた基幹部には少数の管理要員のみを置き、残りの手勢を交戦区域に集中して送り出した。という構図と見て間違いない。
つまり、今レディエーヌが目にしている四体さえ打ち倒せば、自らの持っているキーで施設を正常な状態へ戻す事が可能なはずであった。
麗しき剣の女神は、汗に濡れ、披露と負傷によって隈さえ浮き出ている白皙の美貌を引き締め直した。
「これで最後……。最悪でもここの機能を止めさえすれば、ネルザス艦隊の橋頭堡にされる事はなくなる。……行こう」
そして、レディエーヌもまた、重傷者とは思えぬ神速で、最後の戦場へ飛び込んでいった。
Zeal of Ultralady 第十九話『戦神からの贈り物』 Part11-2
空間障壁発生施設の前面に陣取った三体のネルザス星人。
その周囲では、地表に配置された敵性巨大生物迎撃用の百を超える兵器群が、悉く爆炎と煙を吹き上げていた。
ベルシェンクに露払いを命じられた、ガリエネーダによる物である。
そして、施設が生み出す対巨大生物用の障壁を前にしたベルシェンクの横には、ザリエンテスに捕らえられたメルネデも存在していた。
もはや、まともに動くことすら出来ぬ状態で首輪を填められ、味方の意志を挫く材料とされるなど、民の守護者たる戦女神にとっては死に勝る屈辱と言える。
だが、今のメルネデにできる事は、状況に転機が来る事を信じ、ただひたすらに敵の扱いに耐える事だけである。
「筆頭、予定の時間を過ぎましたが、未だに空間障壁発生施設の制御は完璧ではないようです」
「ああ。対巨大生物用の障壁がまだ生きている事からして、内部の保安機構までは落とせていないようだな」
ザリエンテスの報告に、ベルシェンクはさして不機嫌になるでもなく頷いた。
「こうなった以上、この上等執行官を始末して骸を内部の奴らに突きつけ、抗戦の意志をへし折ってやりましょう。筆頭」
暗緑の戦将が極太の鎖を掲げると、重々しい音を立てつつ、地に伏せたメルネデの上体が引き上げられ、短い苦鳴が漏れた。
「グッ……」
「ならん。……そのような事で奴らの精神を折ることはできまい。加えて、上等執行官の身柄は重要な交渉材料となる」
「はっ。そういう事ならば」
ザリエンテスが手にした鎖を下ろすとほぼ同時に、ベルシェンクとガリエネーダが揃って西の方角へ向き直る。
「筆頭と姉御が揃って、一体どうした?」
「わからぬか? 巨大な敵が迫りつつあるのを」
「って事は、上等執行官のライエーザか!?」
「いや、奴にけしかけたグラドガッハの生命反応が健在である以上、それはない。気配からしてもっと巨大な、艦船クラスの敵勢力だ」
油断無く西の山岳地帯の稜線へ目をやるベルシェンク。
戦闘種族ネルザスに備わった本能なのか、迫り来る新手がメルネデ以上の危険性を持っている事に、この段階で早くも気がついている節が伺えた。
「しかし、惑星ジール側としても、母星の地表上で艦隊戦を仕掛けて来る事はしないでしょう。……守るべき物自体が、戦闘の余波で消滅してしまう」
「お前の言う通りだ、ガリエネーダ。それにも関わらず艦船を駆って向かって来るという事は、己の存在を誇示しているのだろう。我々への挑戦としてな」
そして、三人の侵略者が約3分ほど待った時であろうか。
溢れんばかりの星の輝きと、朧気ながら確かな存在感を持った星雲の色彩をバックに、巨大な漆黒の戦艦が、西方の空から降下して来るのが確認できる。
銀河全域に名を馳せる宇宙海賊ディークロイストの搭乗艦、海賊戦艦ネールゲンであった。
その黒き巨船は、星間軍事国家と言えるネルザスにとっても、幾度となく国家戦略の修正を余儀なくされるほどの被害を受けた驚異的な相手である。
戦艦ネールゲンは傍目にはゆっくりと、しかし実際には、地表に壊滅的な被害を及ぼさぬギリギリの高速で、テスエンセルバ一帯へ降下して来ていた。
「海賊ディークロイストめ……。相も変わらず機を見るに敏な男だ」
苦虫を噛みつぶしたベルシェンクが見上げる先で、ついに漆黒の巨船は舳先を船上の上空に到達させ、空中に静止する。
“ほう。惑星ジールの地表に、まさかネルザスの将軍が三人も揃っているとはな”
「この賊が! 一帯何の目的があってこの戦場に現れた! 俺らの邪魔立てをするなら生かしてはおかんぞ」
泰然自若としたディークロイストの精神波に対し、ザリエンテスが真っ先に吠えた。
“ザリエンテスの若造か。……そういきり立つな。貴様らに用があるのは俺ではなく、この男の方でな”
銀河有数の海賊がそう言うや、船体側面のハッチから矢のような光が射出され、ネルザスの三将軍の目前へ突き刺さった。
そして、光は屈んだ状態の巨大な人影をとり、その全貌を露わにする。
ゆっくりと立ち上がった巨神は、メルネデと同じく銀地に紅の模様を持った、逞しき戦神としてその場に屹立した。
「貴様か、執行官シャディス」
開口一番、そう切り出したベルシェンク。
明らかにシャディスと面識のある反応であった。
対する最年長の星の守護者は、捕らわれながらも茫然と自分に目を向けるメルネデに向き直った。
“よく耐えたな、メルネデ”
“シャ、シャディス様、なぜここに……”
“詳しい経緯は後だ。待っていろ、今助けてやる”
聞く者の心を安堵させるような、力強く暖かな声色である。
だが、それはすぐに正反対の、激しく熱い感情に塗りつぶされたものとなる。
“てめえら……。よくも俺のいねえ間に、土足で人様の故郷荒らし回ってくれたじゃねえか。あまつさえ、俺たちの大事な娘を鎖に繋いでいたぶりやがって、よっぽど殴り殺されてえようだな”
この時、映像を視聴する洋美と城島は、シャディスが相手への殺意を口にするのを初めて目の当たりにしていた。
元々、この戦女神たちの父とも言うべき超人は、普段から砕けた物腰と世慣れしたような人当たりの良さを持っているが、決して粗野ではなかった。
しかし、今という時ばかりは、子が危機に晒された猛獣のごとき怒気を、まさに烈風の如く全身から発散させている。
それだけに、この時の彼が抱いている激情の大きさが、二人にはよく分かった。
“じゃあ、行くぜ……”
そう言った瞬間、シャディスの全身が霞むように消えた。
ガリエネーダもザリエンテスも、揃って周囲の気配を探りにかかる中、一際早くベルシェンクが声を張り上げた。
「ザリエンテス! 横だ!」
浴びせかけられた声にいち早く反応を示し、己の横の空間を巨大な拳でなぎ払うザリエンテス。
だが、それは巨大な岩盤にぶち当たったかのような手応えを残して、いとも容易く弾かれていた。
“でけぇ図体の割に非力だな。ええ?”
「なん……だと!」
暗緑の戦将の目前には、自らの渾身の一撃を片腕で軽々と弾き飛ばしたシャディスがいた。
それを認めた瞬間、かつて経験した事のない超弩級の衝撃が腹部を襲い、ネルザス一の巨体を誇る男の身体は、くの字に折れ曲がった。
「ゴブッ……が、はっ……!」
次いで、咽せ込んだ口から吐き出されたのは、紛れもない苦悶の呻きと大量の吐血である。
その尋常でない喀血の量は、シャディスがザリエンテスの体内を一撃で破壊してのけた証明に他ならない。
“拳打ってな、こう打つんだよ”
言いながら、屈み込んだ敵の頭髪を鷲掴みにし、軽々と上向かせた。
“わかったら消えろ!”
打ち下ろし気味のストレートは、ザリエンテスの顔面を直撃した瞬間、その巨大な運動エネルギーによって爆発を巻き起こし、暗緑の巨体を遙か数百メートルの彼方まで弾き飛ばしていた。
吹き飛ばされた先で倒れ伏し、僅かな痙攣を見せただけで動かなくなる五柱将軍の一角。
そんな敵に一瞥すら加えず、白銀の戦神はすぐ傍らのメルネデに向き合った。
“あ、シャディス様……。本当に申し訳ございません。私が、力不足なばかりに……”
冷静に考えれば、メルネデは味方の部隊を失った、敗戦指揮官とも言える身分である。
その失態を自覚しているからこそ、巨大な大先輩たるシャディスを目の当たりにして、自然と謝罪の言葉が出てきていた。
しかし、当の戦神は気にした様子もなく、辛うじて上体のみを持ち上げた戦女神の側に膝をつき、その肩を力強く抱いた。
“助けに来るのが遅くなって悪かったな。だが、もう大丈夫だ”
“シャ、シャディス様?”
“五柱将軍の三人を相手に、たった一人でよくここまで持ちこたえた。……俺は、お前が娘である事を誇りに思う”
言われた事の意味を理解するのに、メルネデは数秒の時を要していた。
“そんな……私などを家族だなどと……”
“なあに、俺たちゃ運命共同体だ。それを家族て言わずに何て言う。……ま、続きは侵略者どもを叩き伏せてからだ”
まさしく父親としての強さと暖かさに満ちた言葉を娘にかけると、シャディスは徐に彼女の首に填められた鉄環に両手をかけ、一息にそれを引きちぎっていた。
“少しそこで休んでな。すぐに終わる”
無数の修羅場をくぐり抜けた歴戦の戦士としての余裕すらたたえ、シャディスは厳然とネルザス星人たちの前に立ちはだかった。
敵将たるベルシェンクは、その様子を確認しつつ緊張感に満ちた声を上げた。
「ザリエンテスをただの二撃で沈め、巨大生物用の戒めを引きちぎるなど、貴様ら執行官にできぬ事の筈だがな」
“計算上はてめえの言う通りだ、ベルシェンクよ。だが、俺たち前期型とも言える執行官第一世代は、第二世代以降と違って機能的な安定性に劣る分、感情の揺らぎによって力が大きく増減するようになっててな”
「なるほどな。我々は、図らずもかつてない最強の敵を生み出してしまった、という訳か」
“そう言う事だ。……楽に捕虜になれるとは思うなよ?”
右拳を左の掌に打ち付けながら、シャディスはゆっくりと二人の敵将に向かって歩み出す。
「ガリエネーダ、まだザリエンテスには息がある。お前は奴を連れ、この場を脱出せよ。後は私が引き受ける」
腰を落とし、最大限の警戒態勢をとったベルシェンクが、麾下の女将軍に素早く指示を飛ばしていた。
「ベルシェンク様、ここは私と二人で……」
「ならぬ。ギゼンダ殿下やゼイルマーならばともかく、お前では今のシャディスを相手するには足手まといだ」
「クッ……。承知致しました」
足手まといと言われた事よりも、万全の体制で進めていた作戦を一気に危うくされた事の方に、青の女竜は屈辱を感じているようであった。
ザリエンテスに近づき、自らの倍はあろうかと言う巨体を軽々と抱え上げると、そのまま遠巻きにシャディスを避けつつ、自船の係留してある方角へ撤退してゆく。
“見逃して構わんのか、シャディス?”
“ああ。奴らを追撃できるような隙を、このベルシェンクに望むのは無理ってもんだ”
語りかけてくるディークロイストの精神波に、シャディスは目前の竜将から視線を切らずに応じていた。
“それよりお前は手を出すなよ、ディークロイスト。これ以上世話になる訳にはいかんからな”
“心得た。お前の戦いを見届け次第、俺は黙ってこの宙域を離脱しよう”
その言葉に黙然と頷いたシャディスは、改めてドッシリとした徒手格闘の構えを取り、暗灰色の竜将へ向き直る。
“始めようぜ、五柱将軍の筆頭さんよ!”
「良かろう。貴様ほどの戦士との闘争は、戦闘種族ネルザスの一人として望外の喜悦よ」
獰猛な笑みを浮かべたベルシェンクもまた、秘めていた闘志を全て解放し、白銀の戦神に相対した。
そして、両者は全く同時に地を蹴った。
その周囲では、地表に配置された敵性巨大生物迎撃用の百を超える兵器群が、悉く爆炎と煙を吹き上げていた。
ベルシェンクに露払いを命じられた、ガリエネーダによる物である。
そして、施設が生み出す対巨大生物用の障壁を前にしたベルシェンクの横には、ザリエンテスに捕らえられたメルネデも存在していた。
もはや、まともに動くことすら出来ぬ状態で首輪を填められ、味方の意志を挫く材料とされるなど、民の守護者たる戦女神にとっては死に勝る屈辱と言える。
だが、今のメルネデにできる事は、状況に転機が来る事を信じ、ただひたすらに敵の扱いに耐える事だけである。
「筆頭、予定の時間を過ぎましたが、未だに空間障壁発生施設の制御は完璧ではないようです」
「ああ。対巨大生物用の障壁がまだ生きている事からして、内部の保安機構までは落とせていないようだな」
ザリエンテスの報告に、ベルシェンクはさして不機嫌になるでもなく頷いた。
「こうなった以上、この上等執行官を始末して骸を内部の奴らに突きつけ、抗戦の意志をへし折ってやりましょう。筆頭」
暗緑の戦将が極太の鎖を掲げると、重々しい音を立てつつ、地に伏せたメルネデの上体が引き上げられ、短い苦鳴が漏れた。
「グッ……」
「ならん。……そのような事で奴らの精神を折ることはできまい。加えて、上等執行官の身柄は重要な交渉材料となる」
「はっ。そういう事ならば」
ザリエンテスが手にした鎖を下ろすとほぼ同時に、ベルシェンクとガリエネーダが揃って西の方角へ向き直る。
「筆頭と姉御が揃って、一体どうした?」
「わからぬか? 巨大な敵が迫りつつあるのを」
「って事は、上等執行官のライエーザか!?」
「いや、奴にけしかけたグラドガッハの生命反応が健在である以上、それはない。気配からしてもっと巨大な、艦船クラスの敵勢力だ」
油断無く西の山岳地帯の稜線へ目をやるベルシェンク。
戦闘種族ネルザスに備わった本能なのか、迫り来る新手がメルネデ以上の危険性を持っている事に、この段階で早くも気がついている節が伺えた。
「しかし、惑星ジール側としても、母星の地表上で艦隊戦を仕掛けて来る事はしないでしょう。……守るべき物自体が、戦闘の余波で消滅してしまう」
「お前の言う通りだ、ガリエネーダ。それにも関わらず艦船を駆って向かって来るという事は、己の存在を誇示しているのだろう。我々への挑戦としてな」
そして、三人の侵略者が約3分ほど待った時であろうか。
溢れんばかりの星の輝きと、朧気ながら確かな存在感を持った星雲の色彩をバックに、巨大な漆黒の戦艦が、西方の空から降下して来るのが確認できる。
銀河全域に名を馳せる宇宙海賊ディークロイストの搭乗艦、海賊戦艦ネールゲンであった。
その黒き巨船は、星間軍事国家と言えるネルザスにとっても、幾度となく国家戦略の修正を余儀なくされるほどの被害を受けた驚異的な相手である。
戦艦ネールゲンは傍目にはゆっくりと、しかし実際には、地表に壊滅的な被害を及ぼさぬギリギリの高速で、テスエンセルバ一帯へ降下して来ていた。
「海賊ディークロイストめ……。相も変わらず機を見るに敏な男だ」
苦虫を噛みつぶしたベルシェンクが見上げる先で、ついに漆黒の巨船は舳先を船上の上空に到達させ、空中に静止する。
“ほう。惑星ジールの地表に、まさかネルザスの将軍が三人も揃っているとはな”
「この賊が! 一帯何の目的があってこの戦場に現れた! 俺らの邪魔立てをするなら生かしてはおかんぞ」
泰然自若としたディークロイストの精神波に対し、ザリエンテスが真っ先に吠えた。
“ザリエンテスの若造か。……そういきり立つな。貴様らに用があるのは俺ではなく、この男の方でな”
銀河有数の海賊がそう言うや、船体側面のハッチから矢のような光が射出され、ネルザスの三将軍の目前へ突き刺さった。
そして、光は屈んだ状態の巨大な人影をとり、その全貌を露わにする。
ゆっくりと立ち上がった巨神は、メルネデと同じく銀地に紅の模様を持った、逞しき戦神としてその場に屹立した。
「貴様か、執行官シャディス」
開口一番、そう切り出したベルシェンク。
明らかにシャディスと面識のある反応であった。
対する最年長の星の守護者は、捕らわれながらも茫然と自分に目を向けるメルネデに向き直った。
“よく耐えたな、メルネデ”
“シャ、シャディス様、なぜここに……”
“詳しい経緯は後だ。待っていろ、今助けてやる”
聞く者の心を安堵させるような、力強く暖かな声色である。
だが、それはすぐに正反対の、激しく熱い感情に塗りつぶされたものとなる。
“てめえら……。よくも俺のいねえ間に、土足で人様の故郷荒らし回ってくれたじゃねえか。あまつさえ、俺たちの大事な娘を鎖に繋いでいたぶりやがって、よっぽど殴り殺されてえようだな”
この時、映像を視聴する洋美と城島は、シャディスが相手への殺意を口にするのを初めて目の当たりにしていた。
元々、この戦女神たちの父とも言うべき超人は、普段から砕けた物腰と世慣れしたような人当たりの良さを持っているが、決して粗野ではなかった。
しかし、今という時ばかりは、子が危機に晒された猛獣のごとき怒気を、まさに烈風の如く全身から発散させている。
それだけに、この時の彼が抱いている激情の大きさが、二人にはよく分かった。
“じゃあ、行くぜ……”
そう言った瞬間、シャディスの全身が霞むように消えた。
ガリエネーダもザリエンテスも、揃って周囲の気配を探りにかかる中、一際早くベルシェンクが声を張り上げた。
「ザリエンテス! 横だ!」
浴びせかけられた声にいち早く反応を示し、己の横の空間を巨大な拳でなぎ払うザリエンテス。
だが、それは巨大な岩盤にぶち当たったかのような手応えを残して、いとも容易く弾かれていた。
“でけぇ図体の割に非力だな。ええ?”
「なん……だと!」
暗緑の戦将の目前には、自らの渾身の一撃を片腕で軽々と弾き飛ばしたシャディスがいた。
それを認めた瞬間、かつて経験した事のない超弩級の衝撃が腹部を襲い、ネルザス一の巨体を誇る男の身体は、くの字に折れ曲がった。
「ゴブッ……が、はっ……!」
次いで、咽せ込んだ口から吐き出されたのは、紛れもない苦悶の呻きと大量の吐血である。
その尋常でない喀血の量は、シャディスがザリエンテスの体内を一撃で破壊してのけた証明に他ならない。
“拳打ってな、こう打つんだよ”
言いながら、屈み込んだ敵の頭髪を鷲掴みにし、軽々と上向かせた。
“わかったら消えろ!”
打ち下ろし気味のストレートは、ザリエンテスの顔面を直撃した瞬間、その巨大な運動エネルギーによって爆発を巻き起こし、暗緑の巨体を遙か数百メートルの彼方まで弾き飛ばしていた。
吹き飛ばされた先で倒れ伏し、僅かな痙攣を見せただけで動かなくなる五柱将軍の一角。
そんな敵に一瞥すら加えず、白銀の戦神はすぐ傍らのメルネデに向き合った。
“あ、シャディス様……。本当に申し訳ございません。私が、力不足なばかりに……”
冷静に考えれば、メルネデは味方の部隊を失った、敗戦指揮官とも言える身分である。
その失態を自覚しているからこそ、巨大な大先輩たるシャディスを目の当たりにして、自然と謝罪の言葉が出てきていた。
しかし、当の戦神は気にした様子もなく、辛うじて上体のみを持ち上げた戦女神の側に膝をつき、その肩を力強く抱いた。
“助けに来るのが遅くなって悪かったな。だが、もう大丈夫だ”
“シャ、シャディス様?”
“五柱将軍の三人を相手に、たった一人でよくここまで持ちこたえた。……俺は、お前が娘である事を誇りに思う”
言われた事の意味を理解するのに、メルネデは数秒の時を要していた。
“そんな……私などを家族だなどと……”
“なあに、俺たちゃ運命共同体だ。それを家族て言わずに何て言う。……ま、続きは侵略者どもを叩き伏せてからだ”
まさしく父親としての強さと暖かさに満ちた言葉を娘にかけると、シャディスは徐に彼女の首に填められた鉄環に両手をかけ、一息にそれを引きちぎっていた。
“少しそこで休んでな。すぐに終わる”
無数の修羅場をくぐり抜けた歴戦の戦士としての余裕すらたたえ、シャディスは厳然とネルザス星人たちの前に立ちはだかった。
敵将たるベルシェンクは、その様子を確認しつつ緊張感に満ちた声を上げた。
「ザリエンテスをただの二撃で沈め、巨大生物用の戒めを引きちぎるなど、貴様ら執行官にできぬ事の筈だがな」
“計算上はてめえの言う通りだ、ベルシェンクよ。だが、俺たち前期型とも言える執行官第一世代は、第二世代以降と違って機能的な安定性に劣る分、感情の揺らぎによって力が大きく増減するようになっててな”
「なるほどな。我々は、図らずもかつてない最強の敵を生み出してしまった、という訳か」
“そう言う事だ。……楽に捕虜になれるとは思うなよ?”
右拳を左の掌に打ち付けながら、シャディスはゆっくりと二人の敵将に向かって歩み出す。
「ガリエネーダ、まだザリエンテスには息がある。お前は奴を連れ、この場を脱出せよ。後は私が引き受ける」
腰を落とし、最大限の警戒態勢をとったベルシェンクが、麾下の女将軍に素早く指示を飛ばしていた。
「ベルシェンク様、ここは私と二人で……」
「ならぬ。ギゼンダ殿下やゼイルマーならばともかく、お前では今のシャディスを相手するには足手まといだ」
「クッ……。承知致しました」
足手まといと言われた事よりも、万全の体制で進めていた作戦を一気に危うくされた事の方に、青の女竜は屈辱を感じているようであった。
ザリエンテスに近づき、自らの倍はあろうかと言う巨体を軽々と抱え上げると、そのまま遠巻きにシャディスを避けつつ、自船の係留してある方角へ撤退してゆく。
“見逃して構わんのか、シャディス?”
“ああ。奴らを追撃できるような隙を、このベルシェンクに望むのは無理ってもんだ”
語りかけてくるディークロイストの精神波に、シャディスは目前の竜将から視線を切らずに応じていた。
“それよりお前は手を出すなよ、ディークロイスト。これ以上世話になる訳にはいかんからな”
“心得た。お前の戦いを見届け次第、俺は黙ってこの宙域を離脱しよう”
その言葉に黙然と頷いたシャディスは、改めてドッシリとした徒手格闘の構えを取り、暗灰色の竜将へ向き直る。
“始めようぜ、五柱将軍の筆頭さんよ!”
「良かろう。貴様ほどの戦士との闘争は、戦闘種族ネルザスの一人として望外の喜悦よ」
獰猛な笑みを浮かべたベルシェンクもまた、秘めていた闘志を全て解放し、白銀の戦神に相対した。
そして、両者は全く同時に地を蹴った。