Zeal of Ultralady 第十六話『リトルブレイバー』 Part3-2
この関地区を通過する国道一号線は、東の名古屋方面から西の関西方面へ抜ける山間の自動車用道路となっている。
そして、関の街を抜けた先から、滋賀県に入るまではほぼ延々と曲がりくねった峠道の様相となる。
今回、調査課一班が呼び出される事になった原因は、一号線の県境付近で不可解な出来事が発生したためであった。
鈴鹿峠と呼ばれるその一帯に、比較的大規模な地滑りがおきたのは、丁度二日前の事だと言う。
周囲を松や広葉樹に囲まれた峻険な自動車用道路は、事件直後こそ道がふさがれ、通行止めとなったものの、昨日の段階ではすでに仮復旧がなされていると言う。
事件における人命の損失はゼロ。
これは、国道一号とほぼ平行に走る新名神高速道路が、交通量の大部分を引き受けており、交通量がまばらであったためであろう。
とは言え、一日の通過車両が一万台を越えるバイパスだけあり、そのため復旧作業も早かった。さらにいえば、関東の巨大生物災害により、中部・関西地方に人口が多く流入したため、交通の動脈をいつまでも途絶させている訳にいかないという事情もあった。
その地滑りだが、問題となったのは、現象そのものより、欠けた山肌から通常では考えられない物体が新たに姿を覗かせた事にある。
DEMIOとの連絡を担う桐田が、何枚かの写真を手早く一行の眼前に展開して見せた。
すると、そこには暗灰色にくすんだ巨大な岩塊が、己の存在を誇示するかのように、斜面から身を乗り出す形で突き出ている。
「かなり大きいですねぇ。僕の見立てだと、地表に突き出た部分だけでも三十メートルはありますよ」
「まさに仰る通りのサイズです。ですが、この岩塊からかなり特殊な現象が確認されまして」
「というと?」
佐々木の確認に、桐田は目を細めて参ったような表情を浮かべて見せる。
「実はこの岩塊、災害発生当初に担当の者が調べた所、妙な事に常時熱を持っているんですよ。40度前後と、それほど高熱ではないんですが」
「なるほどなるほど。ここら辺に温泉などは?」
聞き返す佐々木も、その様子を注視するメンバーも、すでに普段の真面目な表情を取り戻している。
例え普段の様子がどうであろうと、やはり調査課一班たる者、災害対策組織の一員としての自覚を強く抱いているのだ。
「ええと、鈴鹿山系に属する温泉ですと、ここより北の菰野町などが一番近いですね。この亀山などではサッパリですが」
「とすると、地熱って線は薄いみたいですねぇ。他には、何か変わった部分はありませんでした?」
「うーん。強いて言うなら、弱い磁気が観測された事くらいですね。他には」
その言葉に、佐々木は即座に回答を返す。
「ああ、それはこの岩塊が玄武岩だからですよ。写真があったのですぐ分かりました。そもそも玄武岩っていうのはですね……」
得意の地質学講義を始めようとする元測量技師に、湯島がすかさず呆れた表情で手を差し出し、続きを遮った。
「詳しい話は後にしとけ。そろそろ出るぞ」
用意された二台のバンに、桐田を加えたメンバー八人が分乗する事になるが、洋美はその際ジールへふとした疑問をぶつけてみる。
“ジール。問題の岩塊って、もしかしてゼクスノーツが放った怪獣の一体かしら?”
“いえ。恐らくそれはないでしょう”
戦女神は即答で返してくる。
“ギゼンダから提供された情報によれば、問題の上級怪獣を収めた生体調整ポッドは、明らかに人工物とわかる形状です”
“そっか。一度実物を見ておきたい所だけど”
“それと、ポッドの着陸地点も、我々だけでなく対策室や自衛隊によっておおよその位置が把握されていますし”
“そうだったわね。この中部地方には、伊勢湾に一機が着水しただけだから、いつものように警戒はしてなかったんだけど……”
一班の面々が軒並み緊張を緩めていた理由は、ここにもあった。
ネルザスとの闘いが一段落した際に、狂気の魔人が撒き散らした18の上級怪獣。
それを収めた生体調整ポッドは、射出したグロンダイク級の主ギゼンダはおろか、イージス艦を初めとする自衛隊の防空レーダー網によって殆どが正確な位置を補足されている。
ただ、その内訳は大体が日本近海の海中などと、人の手を寄せ付けぬ位置であり、唯一自由に動けるギゼンダが率先してその回収作業を急いでいる所であった。
もっとも、本土の内陸部に落ちた何基かは、対策室の手によって確認されており、怪獣の覚醒が近い物や、人里に近い場所に落ちた物などを、城島がシャディスに変身する事で処理にあたっていた。
そうして怪獣の覚醒前に回収作業を終えた物は、陸上と海中を合わせて四基を数え、ギゼンダが倒したガルメーザを含め、五体の怪獣を無力化する事に成功していた。
たった一月の間に五体という数は、洋美やジールが思っている以上に良い成果だと言える。
ふと、怪獣の危険性が薄い事を知った洋美が、目前にいる湯島を呼び止めた。
「班長。少しいいですか?」
「どうした、志賀?」
「ここまでの情報からいって、今回はDTの危険性が極めて低いと思われます。そこで一つお願いがあるんですが」
この現代的美人の言う事は、戦女神の発言と同義である。
それを熟知している中年班長は、さも仕方なさげに耳を傾けてくる。
「言ってみろ」
「今回の調査業務に、士堂さん、佐々木さんのご家族と、私の甥の同行を許可して貰えないでしょうか?」
「理由は?」
銜え煙草に火をつけつつ、湯島は横目に視線を飛ばして来る。
「日頃、私たちがどんな業務を行っているのか、家族に知ってもらう事で、これからは過剰な心配をさせずに済むと思うんです」
日頃、常に自分の身を案じているであろう秋宏。
その小さな胸の内を察した洋美の優しさは、ニヒルな、だが決して非情ではない湯島の心を動かしたらしい。
一つ苦笑をしてみせると、眼鏡の超能力者は軽く頷いて見せた。
「いいだろう」
あっさりと希望が通った事に、洋美以下、成り行きを見守っていた士堂や佐々木も喜色を浮かべた。
「ありがとうございます。班長」
「ただし」
と交換条件が出して来るあたり、湯島も普通の上司ではない。
「お前と剣持、池上と士堂で、全員分の昼食を買ってから現場に来い」
「わかりました。お安いご用です」
「これ以上自治体に車を出してもらう訳にはいかんから、現地まではタクシーでな。……当然経費は落ちんぞ」
「そ、そんなぁ……」
「何言ってやがる。元々員数外の家族を連れて行きたいのはお前の方だろうが。足が出た分の経費は自分で持つのが筋ってもんだ」
正論をかまされ、洋美が不承不承頷くと、用意を調えていたメンバーはさっさと車に乗り込んで出発してゆく。
「じゃ、私たちも買い出しして追いかけましょっか」
残った仲間たちにため息をついて向き合うと、洋美は先頭を切って関の街へ歩き出す。
「こうなったら、お弁当に甘いスウィーツもつけて、その分を経費で落としてやるわ」
下らない報復手段を呟くと、すぐ横につけていた池上が聞いてくる。
「あれ、洋美って甘いの好きなんだ? いつもコーヒーがブラックだから、あんまり好きじゃないのかと思ってた」
「あれは香りを楽しんでるの。甘い物は基本的に好きな方よ」
親友に己の嗜好を語る洋美の顔は、あくまで年相応の若い女の物である。
「何がいいかなぁ。レアチーズケーキ、ザッハトルテ、モンブラン。あ、和風で攻めて栗ようかんとかいいかも」
「そんなに甘い物が好きなら、サッカリンでも舐めてろよ」
いかにも洋美の巻き添えを食った、と言いたげな和人が毒づく。
それに反応し、歯を剥く洋美を仲間が押しとどめるのも、一班の日常の一コマである。
突然の業務にも関わらず、実に平和な時間が流れる午前の一時であった。
そして、関の街を抜けた先から、滋賀県に入るまではほぼ延々と曲がりくねった峠道の様相となる。
今回、調査課一班が呼び出される事になった原因は、一号線の県境付近で不可解な出来事が発生したためであった。
鈴鹿峠と呼ばれるその一帯に、比較的大規模な地滑りがおきたのは、丁度二日前の事だと言う。
周囲を松や広葉樹に囲まれた峻険な自動車用道路は、事件直後こそ道がふさがれ、通行止めとなったものの、昨日の段階ではすでに仮復旧がなされていると言う。
事件における人命の損失はゼロ。
これは、国道一号とほぼ平行に走る新名神高速道路が、交通量の大部分を引き受けており、交通量がまばらであったためであろう。
とは言え、一日の通過車両が一万台を越えるバイパスだけあり、そのため復旧作業も早かった。さらにいえば、関東の巨大生物災害により、中部・関西地方に人口が多く流入したため、交通の動脈をいつまでも途絶させている訳にいかないという事情もあった。
その地滑りだが、問題となったのは、現象そのものより、欠けた山肌から通常では考えられない物体が新たに姿を覗かせた事にある。
DEMIOとの連絡を担う桐田が、何枚かの写真を手早く一行の眼前に展開して見せた。
すると、そこには暗灰色にくすんだ巨大な岩塊が、己の存在を誇示するかのように、斜面から身を乗り出す形で突き出ている。
「かなり大きいですねぇ。僕の見立てだと、地表に突き出た部分だけでも三十メートルはありますよ」
「まさに仰る通りのサイズです。ですが、この岩塊からかなり特殊な現象が確認されまして」
「というと?」
佐々木の確認に、桐田は目を細めて参ったような表情を浮かべて見せる。
「実はこの岩塊、災害発生当初に担当の者が調べた所、妙な事に常時熱を持っているんですよ。40度前後と、それほど高熱ではないんですが」
「なるほどなるほど。ここら辺に温泉などは?」
聞き返す佐々木も、その様子を注視するメンバーも、すでに普段の真面目な表情を取り戻している。
例え普段の様子がどうであろうと、やはり調査課一班たる者、災害対策組織の一員としての自覚を強く抱いているのだ。
「ええと、鈴鹿山系に属する温泉ですと、ここより北の菰野町などが一番近いですね。この亀山などではサッパリですが」
「とすると、地熱って線は薄いみたいですねぇ。他には、何か変わった部分はありませんでした?」
「うーん。強いて言うなら、弱い磁気が観測された事くらいですね。他には」
その言葉に、佐々木は即座に回答を返す。
「ああ、それはこの岩塊が玄武岩だからですよ。写真があったのですぐ分かりました。そもそも玄武岩っていうのはですね……」
得意の地質学講義を始めようとする元測量技師に、湯島がすかさず呆れた表情で手を差し出し、続きを遮った。
「詳しい話は後にしとけ。そろそろ出るぞ」
用意された二台のバンに、桐田を加えたメンバー八人が分乗する事になるが、洋美はその際ジールへふとした疑問をぶつけてみる。
“ジール。問題の岩塊って、もしかしてゼクスノーツが放った怪獣の一体かしら?”
“いえ。恐らくそれはないでしょう”
戦女神は即答で返してくる。
“ギゼンダから提供された情報によれば、問題の上級怪獣を収めた生体調整ポッドは、明らかに人工物とわかる形状です”
“そっか。一度実物を見ておきたい所だけど”
“それと、ポッドの着陸地点も、我々だけでなく対策室や自衛隊によっておおよその位置が把握されていますし”
“そうだったわね。この中部地方には、伊勢湾に一機が着水しただけだから、いつものように警戒はしてなかったんだけど……”
一班の面々が軒並み緊張を緩めていた理由は、ここにもあった。
ネルザスとの闘いが一段落した際に、狂気の魔人が撒き散らした18の上級怪獣。
それを収めた生体調整ポッドは、射出したグロンダイク級の主ギゼンダはおろか、イージス艦を初めとする自衛隊の防空レーダー網によって殆どが正確な位置を補足されている。
ただ、その内訳は大体が日本近海の海中などと、人の手を寄せ付けぬ位置であり、唯一自由に動けるギゼンダが率先してその回収作業を急いでいる所であった。
もっとも、本土の内陸部に落ちた何基かは、対策室の手によって確認されており、怪獣の覚醒が近い物や、人里に近い場所に落ちた物などを、城島がシャディスに変身する事で処理にあたっていた。
そうして怪獣の覚醒前に回収作業を終えた物は、陸上と海中を合わせて四基を数え、ギゼンダが倒したガルメーザを含め、五体の怪獣を無力化する事に成功していた。
たった一月の間に五体という数は、洋美やジールが思っている以上に良い成果だと言える。
ふと、怪獣の危険性が薄い事を知った洋美が、目前にいる湯島を呼び止めた。
「班長。少しいいですか?」
「どうした、志賀?」
「ここまでの情報からいって、今回はDTの危険性が極めて低いと思われます。そこで一つお願いがあるんですが」
この現代的美人の言う事は、戦女神の発言と同義である。
それを熟知している中年班長は、さも仕方なさげに耳を傾けてくる。
「言ってみろ」
「今回の調査業務に、士堂さん、佐々木さんのご家族と、私の甥の同行を許可して貰えないでしょうか?」
「理由は?」
銜え煙草に火をつけつつ、湯島は横目に視線を飛ばして来る。
「日頃、私たちがどんな業務を行っているのか、家族に知ってもらう事で、これからは過剰な心配をさせずに済むと思うんです」
日頃、常に自分の身を案じているであろう秋宏。
その小さな胸の内を察した洋美の優しさは、ニヒルな、だが決して非情ではない湯島の心を動かしたらしい。
一つ苦笑をしてみせると、眼鏡の超能力者は軽く頷いて見せた。
「いいだろう」
あっさりと希望が通った事に、洋美以下、成り行きを見守っていた士堂や佐々木も喜色を浮かべた。
「ありがとうございます。班長」
「ただし」
と交換条件が出して来るあたり、湯島も普通の上司ではない。
「お前と剣持、池上と士堂で、全員分の昼食を買ってから現場に来い」
「わかりました。お安いご用です」
「これ以上自治体に車を出してもらう訳にはいかんから、現地まではタクシーでな。……当然経費は落ちんぞ」
「そ、そんなぁ……」
「何言ってやがる。元々員数外の家族を連れて行きたいのはお前の方だろうが。足が出た分の経費は自分で持つのが筋ってもんだ」
正論をかまされ、洋美が不承不承頷くと、用意を調えていたメンバーはさっさと車に乗り込んで出発してゆく。
「じゃ、私たちも買い出しして追いかけましょっか」
残った仲間たちにため息をついて向き合うと、洋美は先頭を切って関の街へ歩き出す。
「こうなったら、お弁当に甘いスウィーツもつけて、その分を経費で落としてやるわ」
下らない報復手段を呟くと、すぐ横につけていた池上が聞いてくる。
「あれ、洋美って甘いの好きなんだ? いつもコーヒーがブラックだから、あんまり好きじゃないのかと思ってた」
「あれは香りを楽しんでるの。甘い物は基本的に好きな方よ」
親友に己の嗜好を語る洋美の顔は、あくまで年相応の若い女の物である。
「何がいいかなぁ。レアチーズケーキ、ザッハトルテ、モンブラン。あ、和風で攻めて栗ようかんとかいいかも」
「そんなに甘い物が好きなら、サッカリンでも舐めてろよ」
いかにも洋美の巻き添えを食った、と言いたげな和人が毒づく。
それに反応し、歯を剥く洋美を仲間が押しとどめるのも、一班の日常の一コマである。
突然の業務にも関わらず、実に平和な時間が流れる午前の一時であった。
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Zeal of Ultralady 第十六話『リトルブレイバー』 Part3-1
3
乗り換えの中継点である亀山駅に到着した一行は、DEMIO調査課の班員と、その家族というメンバーに分かれる事になっている。
「じゃあ、秋宏の事よろしくお願いします。みのりさん、美也子さん」
「はーい。お仕事頑張ってね、みんな」
調査課がらみの異変と聞いているにも関わらず、士堂の妻のみのりはニコニコとした好相で一行を見送っている。
班員は各々の荷物を纏めて駅のホームに降り立つと、車内の家族へ特に挨拶するでもなく乗り換えのホームへ向かってゆく。
その時を見計らい、宗治を筆頭に、三人の子供たちは母親二人を置いて立ち上がる。
「どうしたのよ?」
「ちょっとパパたちを見送って来る」
「あたしも!」
「なるほど。じゃあ、いってらっしゃい」
元気いっぱいの三人へ、美也子が何やら含みを持たせた微笑を投げかけて来るが、当人たちにその意味を察知できるほどの人生経験はない。
やがて、三人が乗車口付近に固まって待つと、すぐにその時は来た。
発車前の合図を耳にした瞬間、三人は勢いよく列車から躍り出る。
背後でドアが閉まり、列車が走り出すのを見届けると、宗治と真里がニンマリとした顔を付き合わせる。
「やった! これで後はパパたちの後をつけるだけね」
「それでもって、向こうで合流すれば、たぶんジールの近くにも連れてってくれるさっ」
行き当たりばったりも良い所の反応ではあるが、むしろこの行動力は子供であるからこその物と言える。
「じゃあ行きましょうか、真里」
「宗治も、グズグズしてるとパパたちに置いて行かれちゃうわよ」
「うん、そうだね。ママ!!……って、えええぇぇ!?」
頭上から投げかけられた声に、目を剥いた宗治と真里。
振り向いた先には、それぞれの母が苦笑じみた表情を浮かべて立っている。
「やっぱり、あんな大きな声で喋ってたからバレてたんだ……」
憮然とした秋宏の呟きが、全ての事情を的確に表していた。
「まっ、私たちも礼護さんたちが仕事でどんな事やってるのか、興味はあったしね」
「……という訳で、今日は職場見学と行きましょうか」
あくまで保護者に連れられる形となった三人は、あからさまに意気消沈しつつ、その後ろ姿を追ってゆくのであった。
三重県旧関町。
2005年1月に隣の亀山市と合併したために、現在は存在しない町である。
地勢的には県北部の鈴鹿郡に位置し、鈴鹿山脈を経て滋賀県に隣接し、古来から近畿地方と中部地方を結ぶ重要なルートとして知られている。
特に現代においても、この地を通る国道一号線においては、三重県側と滋賀県側の高低差が激しいため、有数の難所と呼ばれるほど険しい区間が続く。
また、古くからの街道の要衝についてまわる宿場町の存在も、この関とて例外ではない。
いや、むしろ、その町並みの保存状態の良さから、国による重要伝統的建造物群保存地区に指定されている程であり、観光の材料には事欠かない。
結局、一行は5人の家族を加えた、そのような地区の玄関口である関駅へ到着する事となっていた。
元々宿場町以外に目立った観光スポットの無い地域である。
駅舎前のロータリーから眺められる景色も、実に閑散としており、メンバーの興味を引くような物は一切なかった。
全員がその場に佇んでいると、すでに待機していた県の教育委員会の人間が、目ざとく一行を見つけて寄ってくる。
「すみません。DEMIO調査課の方たちですか?」
ごく当たり前の挨拶を投げかけてくるのは、青年から中年の過渡期に入っている、体格の良い男であった。
「ああ、はいはい。連絡入れておいた調査課一班の者です。そちらは、県の教育委員会の方ですな?」
早くも煙草を吹かそうとしていた湯島は、若干虚をつかれたかのように振り向いた。
「三重県埋蔵文化財センター、調査研究二課の桐田と申します」
「DEMIO研究部調査課一班の湯島です。今日はお世話になりますよ」
対して笑みも浮かべずに握手を交わすと、桐田は逆にニッコリと笑みを浮かべて見せた。
桐田という男の容姿は、丁寧に6・4の割合で髪を分け、ホームベース型の輪郭にガッチリした顔のパーツが配置されている。
パッと見、研究員というよりスポーツマンのような雰囲気の男である。
湯島は、相手の体格を身長180弱、体重80程度と見て取った。
ごくありふれた背広姿ではあるが、服装全体が多少ヤレている所からして、連日何かの仕事に追われていた様子を伺わせた。
「一つ確認させて頂きますが、伺っていた人数より多いようですね?」
「ま、先ほどの連絡で伝えわっていると思いますが、自分たちは慰労旅行の最中でして。家族も一緒について来ちゃってるんですわ」
困ったというより考え込む表情になる桐田に、ニヒルな中年班長は苦笑を送る。
「家族の方には関の街中で観光でもしといて貰うから、その点は気兼ねなく」
「そうですか。では、まず役所の出張所へご案内します。そこで機材の貸し出しと、概要についてご説明させて頂きますので」
「わざわざご丁寧にどうも」
湯島が大ざっぱな了承の頷きを返すと、桐田は待機させておいた数台のタクシーへ合図を送っていた。
亀山市の出張所は、旧関町役場であった建物であった。
東西に述べる宿場の町並みから、北にほんの数分歩いた場所である。
やや古めかしい鉄筋建ての裏手へ案内された一行は、そこで今回貸し出される機材類を目にしていた。
いかにも安っぽいバンのトランクに積まれた機器類を見て、湯島は佐々木に顔を向けた。
「どうだ、行けそうか?」
「さすがにウチのよりは型が古いようですが、十分ですね。地勢に関した調査であれば十分でしょう」
調査活動に支障のない事が確認できると、早速一班のメンバーは桐田に向き直って事情の説明を求めていた。
「さて、桐田さん。我々は第一報での情報以外、今回の出来事についての知識が無いんですよ。現地までの道すがら、もう少し予備知識を頂けませんかね?」
相変わらず場を仕切るように、湯島が官庁側の桐田と言葉を交わしている。
その背後の一班の面々はと言うと、一見大人しく振る舞っているものの、内実は全くもって不真面目な物である。
子煩悩そのものの佐々木は、妻の顔色を伺いながら、かいがいしく娘の真里の相手していた。
妻子持ちコンビの片割れ士堂も、同じく似たような物で、妻のみのりも交えて宗治に『休日のパパ』の顔を向けている。
洋美と和人なと、秋宏を相手に、この休暇にどんな時間を過ごそうかと表情を緩めきっているほどであった。
残った池上と工藤も、真面目に当面の調査業務に話し合ってはいるのだが、すぐにとりとめもない組織内部の噂話へと脱線してしまう有様である。
要するに、メンバー全員ともが、今回の調査に全く乗り気ではないのである。
考えれば無理からぬ事と言えた。
日頃、ジールの陰に隠れていられるとは言え、命がけで怪獣の近辺に身をおかねばならない身である。
せっかくの休暇に、愛する者たちとを団欒を楽しむ時間を削られたメンバーは、やはりこの仕事に対し、好意的になれずにいたのだ。
ただ、それを横目に認めた桐田が、渋い顔ではなく、苦笑を浮かべて見せたのが唯一の救いと言える。
代わりに、立場上面倒な役をこなした湯島は、思い切り舌打ちを響かせつつ、全員を呼び集める。
結局、異能者の中年班長が、家族持ちメンバー四人へ、何だかんだと当てこすりながら説明した事情はこうであった。
もう一人
こんばんは。
最近、ちょっと疲れ気味なFeldenです。
仕事の疲れのせいか、今週はどうも小説の進み具合が良くないです。
色々な構成だとか、物語整合性だとか、伏線張りだとか、そういった諸々を考えて書かなきゃいけない小説は、疲れた頭にはちょっとシンドイのかもw
その代わり、感性だけでできる創作活動はボチボチとやっておりました。
まあ、主に3DCG関連なんですけどね。
いずれ始める予定の(あくまで予定w)裏ブログで、もう一人の主役とも言うべきキャラを形にしてみました。
ジールとフローラの姉にあたる存在で、執行官兄妹の長女・メルネデです。
小説の方にもチラッと名前を出してますが、容姿は今回が初のお披露目になります。
正面図
背面図
身体サイズとしては、身長・47メートル、体重・1130トンと、ジールよりやや大柄な設定です。
性格は長女らしく包容力と優しさに富みますが、その実シビアさにかけては執行官中随一であったりします。
配色はフローラより明るい鮮紅色で、模様も銀地を多くし、よりウルトラらしさを狙っています。
また、デザインする過程でモチーフにしたのは、Feldenが昔やっていたMMORPGゲームの、とある鎧だったりしますw
髪がハニーなのは、他にイメージにあう髪型がなかったためですね。(汗)
また、フローラと同じく純粋な格闘に長けるため、動きの邪魔になる鎧やプロテクターの類は一切身につけていません。
では、ちょっとCGを使ってSS風に。
惑星ジールのとある場所にて
「ジール。こんな所に私を呼び出すなんて、一体どうしたの?」
「メルネデ……いえ、お姉さん。明日から私は、任務でチキュウという惑星に赴きます。その間にフローラが上等執行官になるための最終試験期間を迎える予定なのです」
「それは私も聞いているわ。あの子はあなたが特に目を掛けて育て上げた娘。……やっぱり心配なのね」
「はい。試験官がお姉さんならば、何も問題はないと思うのですが、彼女が初めて単独で実戦に出ると思うと……」
「フフ、その気持ちは分かるわよ。私だって、あなたの最終試験の時はお父さんに同じ事を言った覚えがあるもの」
「そ、そうだったのですか」
「まあ、安心して。試験の合否はともかく、私が付き添う以上は、決して命に関わるような事態にはさせないから」
その後日。
「フローラ、簡単に首をとられてはダメ! 怪獣の攻撃はこんな物じゃないのよ!」
「ぐああっ!! メ、メルネデ姉さんって……力が強すぎる……」
「ここから逆転できるくらいの力がなければ、明日からの試験は生き残れないわ!」
「うううっ! ひゃ、100回の組手で、せめて一本くらいは……」
とまあ、新人のフローラでは、まるで相手にならない実力を持っている訳です。
総合的な能力はジールに一歩譲りますが、格闘能力では彼女を凌いでシャディスに迫る力がある。と設定しています。
やっぱり、ウルトラ物の華は怪獣とのぶつかり合いですしね。
裏ブログでは、この二人を一応の主役に添えてCGを展開して行こうかな~と思ってます。
皆さんは、今回のメルネデとフローラ、どちらがお好みでしょうか?
宜しければご意見をお聞かせ下さい。
それにより、二人の登場の割合を左右しようかと思っています。
では、今日はこの辺で。
最近、ちょっと疲れ気味なFeldenです。
仕事の疲れのせいか、今週はどうも小説の進み具合が良くないです。
色々な構成だとか、物語整合性だとか、伏線張りだとか、そういった諸々を考えて書かなきゃいけない小説は、疲れた頭にはちょっとシンドイのかもw
その代わり、感性だけでできる創作活動はボチボチとやっておりました。
まあ、主に3DCG関連なんですけどね。
いずれ始める予定の(あくまで予定w)裏ブログで、もう一人の主役とも言うべきキャラを形にしてみました。
ジールとフローラの姉にあたる存在で、執行官兄妹の長女・メルネデです。
小説の方にもチラッと名前を出してますが、容姿は今回が初のお披露目になります。
正面図
背面図
身体サイズとしては、身長・47メートル、体重・1130トンと、ジールよりやや大柄な設定です。
性格は長女らしく包容力と優しさに富みますが、その実シビアさにかけては執行官中随一であったりします。
配色はフローラより明るい鮮紅色で、模様も銀地を多くし、よりウルトラらしさを狙っています。
また、デザインする過程でモチーフにしたのは、Feldenが昔やっていたMMORPGゲームの、とある鎧だったりしますw
髪がハニーなのは、他にイメージにあう髪型がなかったためですね。(汗)
また、フローラと同じく純粋な格闘に長けるため、動きの邪魔になる鎧やプロテクターの類は一切身につけていません。
では、ちょっとCGを使ってSS風に。
惑星ジールのとある場所にて
「ジール。こんな所に私を呼び出すなんて、一体どうしたの?」
「メルネデ……いえ、お姉さん。明日から私は、任務でチキュウという惑星に赴きます。その間にフローラが上等執行官になるための最終試験期間を迎える予定なのです」
「それは私も聞いているわ。あの子はあなたが特に目を掛けて育て上げた娘。……やっぱり心配なのね」
「はい。試験官がお姉さんならば、何も問題はないと思うのですが、彼女が初めて単独で実戦に出ると思うと……」
「フフ、その気持ちは分かるわよ。私だって、あなたの最終試験の時はお父さんに同じ事を言った覚えがあるもの」
「そ、そうだったのですか」
「まあ、安心して。試験の合否はともかく、私が付き添う以上は、決して命に関わるような事態にはさせないから」
その後日。
「フローラ、簡単に首をとられてはダメ! 怪獣の攻撃はこんな物じゃないのよ!」
「ぐああっ!! メ、メルネデ姉さんって……力が強すぎる……」
「ここから逆転できるくらいの力がなければ、明日からの試験は生き残れないわ!」
「うううっ! ひゃ、100回の組手で、せめて一本くらいは……」
とまあ、新人のフローラでは、まるで相手にならない実力を持っている訳です。
総合的な能力はジールに一歩譲りますが、格闘能力では彼女を凌いでシャディスに迫る力がある。と設定しています。
やっぱり、ウルトラ物の華は怪獣とのぶつかり合いですしね。
裏ブログでは、この二人を一応の主役に添えてCGを展開して行こうかな~と思ってます。
皆さんは、今回のメルネデとフローラ、どちらがお好みでしょうか?
宜しければご意見をお聞かせ下さい。
それにより、二人の登場の割合を左右しようかと思っています。
では、今日はこの辺で。
なんとか完成
こんばんは。
先日より手間取っていたフローラのプロテクターですが、3D関係で兼ねてからお世話になっているwillさんのアドバイスのより、なんとか解決致しました。
まぁ、方法は単純で、骨格を流用するフィギュアを変更しただけなんですけどねw
それで、着彩してみた完成品がこちらです。
正面図
背面図
なんだか、メビ○スバーニングブレイブに似た感じですね……。
ただ、イメージとしてはジールより熱い性格のフローラらしさを、ソコソコ表現できたかな、と思っています。
しかし、デザインがかなり男性的なので、余り興味を持たれない方も多いかも。と、ちょっと心配をしていたりいますがw
バストアップ画像
胸回りのイメージはこんな感じに落ち着きました。
次は動きをつけてみましょう。
構え
この娘の基本ポーズ。
腕を高く上げていますが、プロテクターが一応フィットしているのがわかるでしょうか?
バック転
このポーズも腕をより高く上げている構図ですが、それでも破綻していません。
予想外の出来に、自分でも思わずニヤリでしたw
ただ、腕を極端に前後したりすると、やはり破綻してしまいますが、これはもうコンフォーム服の宿命ですので、仕方のない所です。
やはり、完全な物を目指すには、macchaさんの言われていたプロテクター一体型フィギュアにしなければならないようです。
でも、そうすると各種モーフが使えなくなってしまうので断念。
一応、このままでもなんとか行けそうですので、少し色々と試してみようかと思います。
さーて、裏ブログの準備が整って来たぞ、と。ニヒヒw
先日より手間取っていたフローラのプロテクターですが、3D関係で兼ねてからお世話になっているwillさんのアドバイスのより、なんとか解決致しました。
まぁ、方法は単純で、骨格を流用するフィギュアを変更しただけなんですけどねw
それで、着彩してみた完成品がこちらです。
正面図
背面図
なんだか、メビ○スバーニングブレイブに似た感じですね……。
ただ、イメージとしてはジールより熱い性格のフローラらしさを、ソコソコ表現できたかな、と思っています。
しかし、デザインがかなり男性的なので、余り興味を持たれない方も多いかも。と、ちょっと心配をしていたりいますがw
バストアップ画像
胸回りのイメージはこんな感じに落ち着きました。
次は動きをつけてみましょう。
構え
この娘の基本ポーズ。
腕を高く上げていますが、プロテクターが一応フィットしているのがわかるでしょうか?
バック転
このポーズも腕をより高く上げている構図ですが、それでも破綻していません。
予想外の出来に、自分でも思わずニヤリでしたw
ただ、腕を極端に前後したりすると、やはり破綻してしまいますが、これはもうコンフォーム服の宿命ですので、仕方のない所です。
やはり、完全な物を目指すには、macchaさんの言われていたプロテクター一体型フィギュアにしなければならないようです。
でも、そうすると各種モーフが使えなくなってしまうので断念。
一応、このままでもなんとか行けそうですので、少し色々と試してみようかと思います。
さーて、裏ブログの準備が整って来たぞ、と。ニヒヒw
コンフォーム服?
こんにちは。
この一週間は前回お話ししていたFloraのリニューアルをしていました。
主にテクスチャの書き換えと、肩回りのプロテクター作成ですね。
テクスチャーは何とか統一感のあるデザインに落ち着ける事ができました。
以下の画像がソレです。
前面図
背面図
とまあ、ここまでは順調だったんです。
しかし……
続くプロテクター作成において、行き詰まりました。
一応、作成したモデルはこんな感じです。
まだ色は付けていませんが、デザインはファイアパターンにしてあります。
さらに胸や肩といったパーツ分けを施し、フィギュア化もしたんですが、いざキャラに着用してみると……
こんな感じに崩れます……
内部の数値だの何だのを色々いじり回しても、症状が悪化するだけでどうにもなりません。
いや、本当今回も参ってます。
正直、今回はバードンの時以上に打開策が見あたらないですが、もう少し悪あがきしてみようと思います。
それでは、今日はこの辺で。
追記
悪あがきとして、P4コンフォーム服のポロシャツの骨格を適用した所、かなりマシになりました。
しかし、腕に割り当てた部分が妙な形に変形してしまい、この部分でもやはり苦戦中ですw
いつになったら完成できるのやら・・・w
この一週間は前回お話ししていたFloraのリニューアルをしていました。
主にテクスチャの書き換えと、肩回りのプロテクター作成ですね。
テクスチャーは何とか統一感のあるデザインに落ち着ける事ができました。
以下の画像がソレです。
前面図
背面図
とまあ、ここまでは順調だったんです。
しかし……
続くプロテクター作成において、行き詰まりました。
一応、作成したモデルはこんな感じです。
まだ色は付けていませんが、デザインはファイアパターンにしてあります。
さらに胸や肩といったパーツ分けを施し、フィギュア化もしたんですが、いざキャラに着用してみると……
こんな感じに崩れます……
内部の数値だの何だのを色々いじり回しても、症状が悪化するだけでどうにもなりません。
いや、本当今回も参ってます。
正直、今回はバードンの時以上に打開策が見あたらないですが、もう少し悪あがきしてみようと思います。
それでは、今日はこの辺で。
追記
悪あがきとして、P4コンフォーム服のポロシャツの骨格を適用した所、かなりマシになりました。
しかし、腕に割り当てた部分が妙な形に変形してしまい、この部分でもやはり苦戦中ですw
いつになったら完成できるのやら・・・w
近況報告と今後の予定
こんばんは。
今日はちょっと近況報告と、今後やって行きたいと思っている予定などを。
まず第一に、更新ペースが少し遅くなります。
というのも、最近なんだか仕事が忙しく、今月はしばらく残業続きになりそうだからです。
創作の時間が圧迫されるのは少々しんどい所ですが、やはり本業はおろそかには出来ませんしね。
そんな訳で、更新ペースについてはご理解いただけたらと思います。
で、そんな少なくなった創作時間で、やって行きたいと思っている事を列挙して行きます。
1・十六話の完結。(当然ですねw)
2・ゼロットスのモデリングの続き。(まぁ、一朝一夕で完成する代物ではありませんが)
3・フローラのお色直しw
まず、最初に1ですが、これは段々と話が本筋に入り込んできたので、そう苦労せずに更新して行けるようになるかと思います。
実を言うと、二十話くらいまでの話のストックは出来ているのですが、そこに至るまでにかなり時間がかかるので、ここらで少し頑張ってペースアップして行こうかなと思っている所です。
2ですが、これは十六話が終わって以降の事ですね。十七話開始前に一気に仕上げてしまうか、またはある程度まで作ってから、再び本編の執筆に入るかはちょっと未定です。
本音を言えば、次の3と絡んだ事情で早く完成させたい所ではあるんですが。
3のフローラ。
実はこの娘、前々から身体の模様を独自の物にしたいと思っておりました。
というのも、今のテクスチャはCRPさんの手による品で、とても良くできた逸品です。
タロウとほとんど同じデザインで、私も特に気に入っている品なんですが、それだけになんとなくキャラが本家のイメージを引きずっている感じなんですよね。
そこで、今回は彼女のイメージチェンジを兼ね、より女らしく独自色を出せるようにテクスチャを作ってみようかと思います。
また、その過程で胸部のプロテクターも、フィギュアとして独立した形で作ってみたいな。と思っております。
もし、無事に満足行くデザインにできたとしたら、彼女を主人公としたPoser画メインの裏ブログでも開いてみようかなぁ、などと考えていたりしますw
え、なんで裏にする必要があるのか? ですって?
そりゃ、まあ表現がこのブログやHPより過激になりそうだから、に決まってますがなw
では、今日の一枚。
お色直しと聞いて、どんな装いになるのか当たりを付けるフローラ。
では、今日はここらへんで。
見ていただいた皆さん、ありがとうございました。
今日はちょっと近況報告と、今後やって行きたいと思っている予定などを。
まず第一に、更新ペースが少し遅くなります。
というのも、最近なんだか仕事が忙しく、今月はしばらく残業続きになりそうだからです。
創作の時間が圧迫されるのは少々しんどい所ですが、やはり本業はおろそかには出来ませんしね。
そんな訳で、更新ペースについてはご理解いただけたらと思います。
で、そんな少なくなった創作時間で、やって行きたいと思っている事を列挙して行きます。
1・十六話の完結。(当然ですねw)
2・ゼロットスのモデリングの続き。(まぁ、一朝一夕で完成する代物ではありませんが)
3・フローラのお色直しw
まず、最初に1ですが、これは段々と話が本筋に入り込んできたので、そう苦労せずに更新して行けるようになるかと思います。
実を言うと、二十話くらいまでの話のストックは出来ているのですが、そこに至るまでにかなり時間がかかるので、ここらで少し頑張ってペースアップして行こうかなと思っている所です。
2ですが、これは十六話が終わって以降の事ですね。十七話開始前に一気に仕上げてしまうか、またはある程度まで作ってから、再び本編の執筆に入るかはちょっと未定です。
本音を言えば、次の3と絡んだ事情で早く完成させたい所ではあるんですが。
3のフローラ。
実はこの娘、前々から身体の模様を独自の物にしたいと思っておりました。
というのも、今のテクスチャはCRPさんの手による品で、とても良くできた逸品です。
タロウとほとんど同じデザインで、私も特に気に入っている品なんですが、それだけになんとなくキャラが本家のイメージを引きずっている感じなんですよね。
そこで、今回は彼女のイメージチェンジを兼ね、より女らしく独自色を出せるようにテクスチャを作ってみようかと思います。
また、その過程で胸部のプロテクターも、フィギュアとして独立した形で作ってみたいな。と思っております。
もし、無事に満足行くデザインにできたとしたら、彼女を主人公としたPoser画メインの裏ブログでも開いてみようかなぁ、などと考えていたりしますw
え、なんで裏にする必要があるのか? ですって?
そりゃ、まあ表現がこのブログやHPより過激になりそうだから、に決まってますがなw
では、今日の一枚。
お色直しと聞いて、どんな装いになるのか当たりを付けるフローラ。
では、今日はここらへんで。
見ていただいた皆さん、ありがとうございました。
Zeal of Ultralady 第十六話『リトルブレイバー』 Part2-2
亀山駅までの移動中、家族を交えた仲間との会話は、実に弾む物であった。
洋美は主に同年代の女性同士、池上・みのり・美也子の四人で固まって、育児の注意点を聞いたり、調査課一班内の話題を提供したりと、心から会話を楽しんでいた。
そんな保護者同士の空気が伝わったのか、秋宏や宗治と真里は早くもうち解けた雰囲気になっている。
聞けば、宗治が秋宏と同じ七歳で小学二年生。真里は同じ七歳ながら三年生であり、二人より一学年上との事である。
ふと、洋美は真里の生まれた歳を逆算し、出た答えを美也子におずおずと質問する。
「失礼ですが、もしかして佐々木さんと美也子さんって、学生の内に結婚されていたんですか?」
「あら、バレちゃったみたいね。……確かに、真里はあの人が学生時代に生まれたけど、結婚したのは彼が大学を出てすぐなのよ」
そう言って屈託なく笑う美也子の表情は、堂々たるものである。
「うはー、佐々木さんって意外に大胆ー」
細目を丸くして洋美と顔を見合わせた池上が、今度はみのりに質問を飛ばす。
「みのりさんって、士堂さんとはどんなきっかけで知り合ったんです?」
「私も学生時代から礼護さんと付き合ってたけど、彼がプロのラリードライバーになった時に結婚したのね。本当、捻りのない普通の恋愛」
「捻りのあるなしより、恋愛で結婚してるって所が二人とも素晴らしいと思いますよ。こちらの香澄って、いまだに決まった相手いないんですから」
洋美が珍しく仲間を話のネタにすると、池上もまた負けじとやり返す。
「あーら、勤務中にイチャイチャするどこかの誰かさんたちよりは、十分節操があると思うんだけどなぁ」
などと他愛もない会話に保護者たちが談笑している時、通路を挟んだ席ではその子供たちが悪戯っけを発揮すべく、何やら内緒話に興じていた。
「なあ、秋宏。実際に怪獣って見てみたいと思わないか?」
と切り出すのは士堂の息子の宗治である。
「怪獣? 見たいよ。でも、それがどうかしたの? 宗治くん」
「もしかしたら、パパたちの行き先で怪獣見られるかもしれないと思うんだ。真里ちゃんも見たいでしょ?」
「私は怪獣なんて怖いからイヤ!」
「えー、あんな迫力があるの、一回は見ておきたいと思わないの?」
「だって、怪獣って家を潰したり、人の事襲ったりするんでしょ? そんなのは見たくないわよ。でも……」
「でも?」
二年生二人の視線を受けたおしゃまな三年生は、目を瞑って得意げな顔になる。
「ウルトラレディ・ジールには一回でいいから逢ってみたいわね」
「そうそう、それだよ。怪獣が出れば、ジールも来てくれるじゃん? だからまずは怪獣をマークしとくんだよ」
「僕もジールは大好きだけど、そんなに丁度良く怪獣なんて出て来るのかなあ」
などと、戦女神の熱烈ファンたる三人は、噂の当人がすぐ近くにいる事も知らず、思い思いにその心を言葉にしていた。
ふと、やはり宗治が二人を近くに寄らせ、耳打ちをするように何事かをゴニョゴニョと囁きかける。
すると。
「ええー! 宗治くんってば無茶だよ、そんなの!」
「し、静かにしろって秋宏。パパやママに知られたらマズいだろ」
慌てて新たな友達の口元を押さえる宗治。
今度は、その様子を見ていた真里が、思い切り愛くるしい笑顔を浮かべてみせる。
「あたしはそれいいと思うわ。ジールにあえるなら、ぜひやってみるべきよ」
「真里ちゃんもそー思うよね。」
「本当に大丈夫かなあ……」
「大丈夫だって。秋宏ってノリ悪いなあ」
「宗治くんが強引なんだよ」
普段、保護者の洋美と離れて集団生活を営んでいるためか、秋宏は歳の割には妙に分別くさい態度を発揮する。
すると、今度は横から真里がどことなく得意そうな顔を向けて来る。
「秋宏くんが行かないなら、あたしと宗治くんでジールを見てくるから。それで、お土産話に聞かせてあげるね」
早くもジールにあえると決めつけている二人に、秋宏は表情を二転三転させた後、ようやく言葉を紡ぎ出した。
「わかったよ、僕も行くよ。二人が心配だし」
おませなセリフを述べた秋宏。その真意を誤解した宗治は、口をへの字に曲げて食ってかかって来る。
「あっ、秋宏。お前、オレの事舐めてるだろ。オレって、実は婆ちゃんの家にも一人で行った事あるんだぞ」
「お婆ちゃんの家? どこ?」
「埼玉県」
「乗り換えは何回やったの?」
移動の難易度に関わる部分を的確に突っ込まれ、宗治は多少モジモジしつつボソリと口にする。
「乗り換えはしてないよ」
「とすると、大井町から京浜東北線で大宮とかまでいったのかなぁ」
秋宏が末恐ろしい鉄道マニアぶりを発揮すると、宗治も真里もうっと唸って黙り込んでしまう。
そして、徐に彼を認めたような発言が漏れる。
「……あ、秋宏って頭いいじゃん。よし、お前が俺たちに協力してくれれば、バッチリジールを拝めるはずだっ!」
「だから危ないよ」
「しつけーなぁ。ジールのどこが危ないんだよ」
「僕、実際に見た事あるけど、とにかくジールや怪獣って大きいんだ。もしジールが怪獣と戦ってる所に近づいたりしたら、絶対ペシャンコにされちゃうよ」
「だったら離れて見ればいいだけよ」
そう、真里が言った時であった。
一拍の間を置き、宗治と真里が文字通り目を丸くする。
「えーっ、秋宏! お前ってジールにあった事あるのかよ!?」
「すごいすごい! ねえねえ、どこで見たの?」
一気に興奮した二人に対し、素直で愛らしい少年は、記憶を手繰るような仕草を見せた。
「お正月くらいに、お姉ちゃんや和人兄ちゃんと出かけた時だよ。行き先は、たしかジョウガシマっていう所だったと思う」
「じゃあさじゃあさ、その時の様子教えてよー」
「うん、いいよ」
子供たち三人の間には、早くも友誼めいた物が生まれ初めているようである。
今や、純真な子供たちによる冒険劇が幕を開けようとしてた。
洋美は主に同年代の女性同士、池上・みのり・美也子の四人で固まって、育児の注意点を聞いたり、調査課一班内の話題を提供したりと、心から会話を楽しんでいた。
そんな保護者同士の空気が伝わったのか、秋宏や宗治と真里は早くもうち解けた雰囲気になっている。
聞けば、宗治が秋宏と同じ七歳で小学二年生。真里は同じ七歳ながら三年生であり、二人より一学年上との事である。
ふと、洋美は真里の生まれた歳を逆算し、出た答えを美也子におずおずと質問する。
「失礼ですが、もしかして佐々木さんと美也子さんって、学生の内に結婚されていたんですか?」
「あら、バレちゃったみたいね。……確かに、真里はあの人が学生時代に生まれたけど、結婚したのは彼が大学を出てすぐなのよ」
そう言って屈託なく笑う美也子の表情は、堂々たるものである。
「うはー、佐々木さんって意外に大胆ー」
細目を丸くして洋美と顔を見合わせた池上が、今度はみのりに質問を飛ばす。
「みのりさんって、士堂さんとはどんなきっかけで知り合ったんです?」
「私も学生時代から礼護さんと付き合ってたけど、彼がプロのラリードライバーになった時に結婚したのね。本当、捻りのない普通の恋愛」
「捻りのあるなしより、恋愛で結婚してるって所が二人とも素晴らしいと思いますよ。こちらの香澄って、いまだに決まった相手いないんですから」
洋美が珍しく仲間を話のネタにすると、池上もまた負けじとやり返す。
「あーら、勤務中にイチャイチャするどこかの誰かさんたちよりは、十分節操があると思うんだけどなぁ」
などと他愛もない会話に保護者たちが談笑している時、通路を挟んだ席ではその子供たちが悪戯っけを発揮すべく、何やら内緒話に興じていた。
「なあ、秋宏。実際に怪獣って見てみたいと思わないか?」
と切り出すのは士堂の息子の宗治である。
「怪獣? 見たいよ。でも、それがどうかしたの? 宗治くん」
「もしかしたら、パパたちの行き先で怪獣見られるかもしれないと思うんだ。真里ちゃんも見たいでしょ?」
「私は怪獣なんて怖いからイヤ!」
「えー、あんな迫力があるの、一回は見ておきたいと思わないの?」
「だって、怪獣って家を潰したり、人の事襲ったりするんでしょ? そんなのは見たくないわよ。でも……」
「でも?」
二年生二人の視線を受けたおしゃまな三年生は、目を瞑って得意げな顔になる。
「ウルトラレディ・ジールには一回でいいから逢ってみたいわね」
「そうそう、それだよ。怪獣が出れば、ジールも来てくれるじゃん? だからまずは怪獣をマークしとくんだよ」
「僕もジールは大好きだけど、そんなに丁度良く怪獣なんて出て来るのかなあ」
などと、戦女神の熱烈ファンたる三人は、噂の当人がすぐ近くにいる事も知らず、思い思いにその心を言葉にしていた。
ふと、やはり宗治が二人を近くに寄らせ、耳打ちをするように何事かをゴニョゴニョと囁きかける。
すると。
「ええー! 宗治くんってば無茶だよ、そんなの!」
「し、静かにしろって秋宏。パパやママに知られたらマズいだろ」
慌てて新たな友達の口元を押さえる宗治。
今度は、その様子を見ていた真里が、思い切り愛くるしい笑顔を浮かべてみせる。
「あたしはそれいいと思うわ。ジールにあえるなら、ぜひやってみるべきよ」
「真里ちゃんもそー思うよね。」
「本当に大丈夫かなあ……」
「大丈夫だって。秋宏ってノリ悪いなあ」
「宗治くんが強引なんだよ」
普段、保護者の洋美と離れて集団生活を営んでいるためか、秋宏は歳の割には妙に分別くさい態度を発揮する。
すると、今度は横から真里がどことなく得意そうな顔を向けて来る。
「秋宏くんが行かないなら、あたしと宗治くんでジールを見てくるから。それで、お土産話に聞かせてあげるね」
早くもジールにあえると決めつけている二人に、秋宏は表情を二転三転させた後、ようやく言葉を紡ぎ出した。
「わかったよ、僕も行くよ。二人が心配だし」
おませなセリフを述べた秋宏。その真意を誤解した宗治は、口をへの字に曲げて食ってかかって来る。
「あっ、秋宏。お前、オレの事舐めてるだろ。オレって、実は婆ちゃんの家にも一人で行った事あるんだぞ」
「お婆ちゃんの家? どこ?」
「埼玉県」
「乗り換えは何回やったの?」
移動の難易度に関わる部分を的確に突っ込まれ、宗治は多少モジモジしつつボソリと口にする。
「乗り換えはしてないよ」
「とすると、大井町から京浜東北線で大宮とかまでいったのかなぁ」
秋宏が末恐ろしい鉄道マニアぶりを発揮すると、宗治も真里もうっと唸って黙り込んでしまう。
そして、徐に彼を認めたような発言が漏れる。
「……あ、秋宏って頭いいじゃん。よし、お前が俺たちに協力してくれれば、バッチリジールを拝めるはずだっ!」
「だから危ないよ」
「しつけーなぁ。ジールのどこが危ないんだよ」
「僕、実際に見た事あるけど、とにかくジールや怪獣って大きいんだ。もしジールが怪獣と戦ってる所に近づいたりしたら、絶対ペシャンコにされちゃうよ」
「だったら離れて見ればいいだけよ」
そう、真里が言った時であった。
一拍の間を置き、宗治と真里が文字通り目を丸くする。
「えーっ、秋宏! お前ってジールにあった事あるのかよ!?」
「すごいすごい! ねえねえ、どこで見たの?」
一気に興奮した二人に対し、素直で愛らしい少年は、記憶を手繰るような仕草を見せた。
「お正月くらいに、お姉ちゃんや和人兄ちゃんと出かけた時だよ。行き先は、たしかジョウガシマっていう所だったと思う」
「じゃあさじゃあさ、その時の様子教えてよー」
「うん、いいよ」
子供たち三人の間には、早くも友誼めいた物が生まれ初めているようである。
今や、純真な子供たちによる冒険劇が幕を開けようとしてた。
Zeal of Ultralady 第十六話『リトルブレイバー』 Part2-1
2
その翌日の午前中である。
洋美はJR名古屋駅前のロータリーを、甥の秋宏と手を繋ぎつつ、和人と並んで歩いていた。
今回の慰安旅行の行く先は、佐々木お勧めの旅館がある三重県の伊勢・志摩と言う予定であった。
当の佐々木はこの名古屋が出身であり、家族も付近に身を置いている。だが、実は他の班員の家族も、ギゼオネスの侵略に際し軒並みこの地方へと避難していた。
一班の中では洋美と士堂がこれにあたり、一度それぞれの愛する者を迎えに行く予定となっている。
そんな事情もあってか、メンバーの集合場所は、この名古屋駅前である。
秋宏を施設に預けていた洋美は、彼の衣類や日用品やらの調達で、もっとも待ち合わせ場所に遅く到着するはずであった。
普段着としているクリーム色のYシャツに濃紺のスラックス、同色のジャケットに身を包んだ洋美の姿は、人柄に相応しくカラッとした清々しさに溢れていた。
それは、何より大事な秋宏と、久々に時間を共に出来る事実も大きく関係している。
その秋宏と横を行く和人は、期せずして似た格好で今回の旅行に望んでいる。
幅に余裕のある暖色のカジュアルパンツと、色つきTシャツの上から着込んだランニングシャツ。さらに上には薄手のジャンパーを引っかけた姿は、双方共にストリートバスケに興じていてもおかしくないスポーティさだった。
年の離れた兄弟と言った雰囲気の二人は、今では本当の家族と呼んでも差し支えないほど、息のあったやりとりを見せていた。
直接巨大生物の被害を受けていない名古屋は、元々日本有数の都市と言う事もあり、今のような平日でもそれなりの喧噪を見せている。
とはいえ、巨大生物災害の頻発するこのご時世では、社会がまともに回るはずもなく、アテもなく街路に繰り出している若者や、職を失った元労働者たちが大半であった。
今回ばかりは、そんな晴れやかとは言えない雰囲気には気をとめず、洋美たちは待ち合わせの改札前へ到着する。
駅の入り口のすぐ付近、人々の通行の邪魔にならない場所に、仲間たちはたむろしていた。
人数は普段より四人も多く、見慣れない女性や子供たちが一行に混ざっている。
仲間の家族であるのは間違いない。
「みんな、おまたせ」
「相変わらず予定のピッタリ五分前だな、志賀」
「特に心がけてる訳じゃないですけどね、班長」
努めて明るく挨拶を交わすと、早速士堂と佐々木が自慢の家族を紹介してくれる。
「志賀さん、紹介するよ。俺の女房と息子だ」
薄手のセーターとジーンズで身を飾る士堂は、元々かなりの長身と言う事もあり、欧米のドラマにでも出て来そうな、スポーティかつ逞しげな父親像を体現している。
そして、その脇に寄り添う小柄な若い女性と、秋宏と同程度の背丈の男児。
「初めまして、士堂の妻のみのりです。こっちが息子の宗治。……宗治、お父さんのお友達にご挨拶しましょ」
「こんにちは。士堂宗治です」
「宗治君、こんにちは。私、お父さんの仕事仲間で、志賀洋美って言うの。隣が甥の古城秋宏。仲良くしてあげてね」
ボブカットに纏めた柔らかい顔立ちの秋宏に対し、士堂の息子の宗治は、髪をいかにも男の子と言った短さに纏めていた。
その母親のみのりだが、こちらは池上に輪をかけて小柄なだけでなく、とても三十路を越えているとは思えない幼い印象であった。セミロングの癖毛が、その印象に余計輪をかけている。
何も知らずに対面していたなら、歳が二十代前半と言われても頷いているだろう。
池上にも勝る柔らかい雰囲気は、猫どころか子犬のようですらある。
彼女の様子から、同僚の元プロドライバーの好みの女性象が見えてくるようで、洋美も思わず楽しげな視線を相手に送ってしまう。
和人や秋宏がその二人と言葉を交わし始めると、今度は佐々木が寄ってくる。
「志賀さん、こっちが僕の家族。妻の美也子と娘の真里」
佐々木の妻の美也子は、士堂みのりとは対照的に、どことなくピシッとした空気を纏った女性である。
背丈も佐々木と同じ程に高く、女性としてはまず長身と言って良いであろう。
ヘアバンドでスッキリと纏めた黒の長髪と、整った切れ長の目元は、むしろ和服のほうがイメージにマッチしそうである。無論、今はオーソドックスなツーピース姿であるが。
そして、そんな母親の容姿を受け継いだのか、娘の真里もまさに彼女を幼くしたような容姿の持ち主であった。
あえて年齢以外の違いを挙げるとすれば、子供らしく好奇心に満ちた眼差しと、着用しているのがワンピースと言う点だけであろう。
「いつも夫が世話になっております。今後とも、何とぞよろしくお願い致します」
「……よろしくお願いします」
母の仕草を真似た真里が、1テンポだけ遅れて洋美へ頭を下げる。
「あ、いえ、こちらこそいつも良くして頂いておりまして」
などと、相手の礼儀正しさにつられ、洋美も大仰なお辞儀を返してしまう。
そうして、全員の顔合わせが終わると、今まで脇で携帯の通話をしていた湯島が、何やらバツが悪そうに全員へと向き直る。
「あースマン、みんな。どうやら予定とは別の経路を経由して行く事になりそうだわ」
相変わらずさりげない声で、一同が訝るような情報を吐き出す湯島。
「どういう事です、班長?」
一同でもっとも早く反応したのは、やはりと言うべきか、士堂と佐々木であった。
日頃から、長時間の勤務によって家族とあまり接点を持てないためだろうか。久々の親子団欒の席を邪魔された父親たちの顔は、どことなく渋い物であった。
その辺りの事情は洋美も同じだが、反応が妻子持ちコンビに一瞬遅れを取るのは、やはり親と叔母という関係の差なのかも知れない。
「まさか……怪獣!?」
相棒の声を聞いた時点で、洋美は初めてその可能性を思い出した。
DEMIOの調査課メンバーとして、湯島の言葉を聞いた段階ですぐ思い浮かべねばならない事例である。
それを仲間の声によって気づかされるとは、少したるんでいた。と思い直さざるをえない。
だが、やはり最大の敵ギゼオネスに打ち勝ったと言う安堵は、多少なりとも精神に油断を招いていたようである。
洋美は、それが大事な局面になる前に発覚しただけでも良かった、と前向きに捕らえる事にしていた。
「班長。詳細をお願いします」
「ああ、結論から言えば怪獣じゃない。……今し方本部から入った連絡によると、宿泊先と同じ三重県で、不自然な現象が観測されたそうだ」
「宿泊先に近いんスか?」
露骨に嫌そうな表情をするのは、むろん和人である。
「いや、県の正反対だ。現場は三重県北部の関市。起こっている現象は、どうやら地質の変化に関係した物らしい」
地質、という言葉を聞き、班員の視線は一斉に佐々木へと集中する。
元測量技師にして、地質学にもかなりの知識を有する彼ではあるが、今度ばかりはいつものような笑顔を見せなかった。
「調査するにしても、機器がないんじゃどうしようもありませんって」
お手上げのジェスチャーをしてみせる佐々木に、湯島は苦笑して言葉を継いだ。
「ある程度の機器は、県の調査機関から貸与してもらえるそうだ。それに、今回は本格的な調査じゃない」
「というと?」
「あくまで巨大生物災害に発展するかどうかの見通しを立てる程度でいいそうだ。そのため、夕方までには二班が調査を引き継ぎに来てくれる。後は予定通り、伊勢・志摩で全員揃ってのんびりしようや」
「なるほど、一刻も早く最重要情報を探り出し、人心の安定をはかるって訳ですな」
太い腕を組んで、ウンウンと一人納得しているのは工藤である。
「相変わらずクソ真面目なこって」
いつもと変わらぬ調子で和人が揶揄の言葉を投げかけるが、工藤も工藤でそれを意に介さずにいる。
「じゃあ、三重の亀山駅を経由するルートで伊勢へと出発するぞ」
班長らしく場を纏めた湯島のセリフに、班員のみならず、その家族たちも頷いたのであった。
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